「良くも悪くも、シリーズ中もっとも"普通の映画"」映画 妖怪ウォッチ FOREVER FRIENDS Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
良くも悪くも、シリーズ中もっとも"普通の映画"
「妖怪ウォッチ」の劇場版5作目。オトナ向けの感動要素を持った作品で、良くも悪くも、シリーズ中もっとも"普通の映画"になった。今までが奇をてらいすぎていた。
第1作の78億円から→55.3億円→32.6億円→20.4億円と尻すぼみ。「妖怪ウォッチ」の一時期の熱狂的なブームは、一段落している。
それでもまだ10億円を超えているので、巨大なエンターテイメントである。と同時に、5周年とはいっても国民的キャラクター、"ピカチュウ"の映画化21年と比べて、今後永続的に定着するかどうかは未知数だ。
"妖怪ウォッチ"はアニメ化にあたり、パロディによるギャグアニメを標榜している。キャラクターひとつひとつが、他の創作物のパロディであることが特徴で、申し訳ないがリスペクトはできない。
また他の国民的アニメがやメインキャラクターを大事に使いつづけるのに対して、ストーリーが擦りきれる前に、新章突入したり、スピンオフが多用されてきた。たった5年なのにすでにジバニャンでさえアレンジメントが進む。
ただ、いつも思うのは、日野晃博は、"熱烈な映画マニアだなぁ"ということ。映画的な構成や、映像の表現手法の革新など、挑戦的な姿勢は、日本の映画人たちが見倣うべきものがある。
第1作の「誕生の秘密だニャン!」は、日本映画がトラウマとなっている、"3D上映"だった。大拍手。ストーリーはいわゆるキャラクターの前日譚を語る"ビギンズ"もので、これは当時の(いまも続く)映画界のトレンドだった。
第2作「エンマ大王と5つの物語だニャン!」では、オムニバス形式のSFホラー「トワイライト・ゾーン」(1983年・原題:The Twilight Zone)を意識しているかのような構成。
第3作「空飛ぶクジラとダブル世界の大冒険だニャン!」は、実写と3DCGのハイブリッド映画に挑戦している。うまくいったかどうかは別として、これはディズニーが果敢に挑戦してきた、名作「メリー・ポピンズ」(1964)から始まるアニメの歴史的発想である。
そして第4作はパクリであることへの開き直りから、ついに「ゲゲゲの鬼太郎」とコラボへ及んだ。自虐的である。ギャク作品にオリジナルを登場させるのは、"モノマネ番組"同様、王道的な笑いである。
「妖怪ウォッチ」は、ギャグ路線を選んでしまったことが災いして、ネタ切れ感が早すぎる。日野晃博代表は、お笑い芸人じゃないし、なんでも自分でやろうとしないで、脚本などはもっと外部ブレーンを使ったほうがいいと思う。
そして巡りめぐって、第5作は、"普通のアニメ映画"になった。エンマ大王の"ビギンズ"ものというのは安易だが、過去を回想する形で、キャラクターの深掘りを行い、エンマ大王に厚みを持たせたいのかもしれない。
しかし看板キャラクターであるジバニャンは出てこない・・・もっとこすったほうがいいのに。
おカネはあるので、映像はとても贅沢に作られている。日本神話のキャラクター総出演。ラストのバトルシーンのキャラクターの多さはとてつもなく、見ごたえや充実度はシリーズ最高だと思う。
挑戦姿勢は評価できるものの、シリーズとして、あっちこっちに散らかしすぎて、収拾がつかなくなっているのが心配。どうなってしまうのだろう。
(2018/12/15/TOHOシネマズ日比谷/ビスタ)