「好きとか愛とか、」愛がなんだ ヨークさんの映画レビュー(感想・評価)
好きとか愛とか、
いやぁ、なんとも煮え切らないこの感じが人間味に溢れていて見応えある映画だった!
マモルに片想いのテルコと、葉子に片想いの仲原。全く相手にされず、良いように扱われているように見える関係性。だがその実、そんな風に我儘にしてしまっているのは好きな相手の為と思ってなんでも言うことを聞いてしまうテルコや仲原なのではないか。
そして、この片想い2人は途中から全く別の道をいく。
仲原は好きだからこそ諦め、テルコは好きだからこそもう好きではないと嘘までついて関係が破綻しないよう執着し続ける。
どれが正解、なんて他人が決められるものではない。どんな選択をしたって、結局はすべて自分に返ってくるだけのこと。どこまでいっても自分の人生を生きるしかないのだから。
ただ、叶わない恋、相手にとって便利な関係性というひとつの現象に対する捉え方や考え方がテルコと仲原で真逆で、この作品のおもしろいところ。
恋愛以外の視点で見た時、仲原は好きな写真の道へ突き進み個展を開くまでに至ったのに対し、テルコは銭湯や動物園など転々としている。
テルコにとっては、恋愛と恋愛以外かの世界で生きているように見えて、それはすこしサイコパスな怖さも感じるし何よりも将来が不安…。
そうやって恋愛だけに夢中になれるのはまだ若いからでこのさき歳をとると…なんて現実的な話はナンセンスでくね、はい。
ラストで、葉子が仲原を名前で検索して、個展やってることを知ってわざわざ観に来た。そして自分の写真の前で微笑み仲原に振り返る。この後の展開を想像してしまわずにはいられない!
ただそれもこの作品の主題ではないので省略。それでいいと思う。
この映画は、どこまでも対極的なテルコと仲原の人間模様をみるところだと思う。それに対応するマモルと洋子の言動も込みで。
安易に答えを提示せず、ただただ人間ドラマを映し出しているのが良い。