「パスタ作る!」愛がなんだ Miyuさんの映画レビュー(感想・評価)
パスタ作る!
とにかくヒリヒリした。
マモちゃん勝手だなあ、ずるいなあ、でも男の子ってこういう事多いのかなあ。と、テルちゃん擁護に立ちながら、テルちゃんやりすぎ、そりゃ帰れって言われるよ、とマモちゃんの気持ちにも立てる。どちらか一方に感情移入し続けるのではなく、両方の気持ちが少しずつわかってしまうから余計にヒリヒリする。
予告編で、好きといえないすべての人へ、とあったからには恋愛への応援のようなものが詰まった作品なのだろう、と観に行った。が、それは甘かった。笑「幸せになりたい」「愛ってなんだよ、好きってなんだよ」という気持ちと葛藤しながら、ハッピーエンドじゃないにしても何か一筋の光が見えるのだろうと思ったら。もっと複雑で拗らせていて、でもこれこそ恋愛?の本質なのかもしれないと思わせるような、「なぜだろう、いまだにわたしは田中守ではない」というセリフ。好きという感情を超越したものなのか、それとも恋愛の本質なのか、恋愛経験の浅いわたしにはまだまだわからないけれど。
作品の撮り方、役者さんの演技すべてがとても自然でリアルで、だからこそいっそうヒリヒリさせているのかなと感じた。岸井ゆきのさんのマモちゃんが好きすぎてバカな感じがリアルでひどく感情移入してしまった。マモちゃんに誘われた時の嬉しそうな表情やマモちゃんの一言一句に機敏に反応してしまう演技、またマモちゃんへの気持ちを隠して取り繕う姿と「よかった、山田さんが俺のこと好きじゃなくて」と言った時の微妙な表情がとても印象的だった。また、若葉竜也さん演じる仲原のセブンイレブンでの対峙シーンがうますぎて切なすぎて大好き。このシーンの「諦めることくらい自由に決めさせてくださいよ」があったからこそ、葉子が写真展に来てくれた時の表情が映えると思った。そして成田凌さん演じるマモちゃんで最も印象に残っているのは、すみれさんを前にして見ていて恥ずかしくなるくらいテルちゃん化する姿。この姿も相まってマモちゃんを憎めなくなった。
線香花火のシーンを花火に注目した近くからではなく、引きで撮っている構図がとても好み。
作り込まれすぎていない、でも細部までこだわった、リアルで自然な作品。ほとんどのシーンが、無理なくある意味ダラダラとした会話になっていて流れている時間がとても心地よかった。
褒めてしかいない。とても素敵な作品!