「大海原の動と静が見事なサバイバル実話」アドリフト 41日間の漂流 りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
大海原の動と静が見事なサバイバル実話
1983年のタヒチ。
世界を旅している20代前半の米国人女性タミー(シェイリーン・ウッドリー)。
ヨットで世界中を航海している英国人リチャード(サム・クラフリン)と知り合い、恋仲になる。
ある日、リチャードは同じ航海仲間の英国人中年夫婦から、彼らの豪華ヨットを米国サンディエゴまで回航してほしいと依頼される。
ふたりは老いた親の病状が悪化したために、英国に戻らなければならないからだ。
豪華ヨットでの航海のチャンスなど、またとないこと。
さらに、今度は愛するタミーとともに航海することができる・・・
出帆したふたりであったが、数日後、大型ハリケーンに遭遇し、効果ヨットのマストは折れ、漂流することになってしまう・・・
といった物語で、映画はハリケーンに遭遇し、水浸しのキャビンでタミーが意識を取り戻すところから始まります。
リチャードの姿はなく、双眼鏡で、救命ボードにしがみついているリチャードを発見して救出するも、彼は右脚と肋骨を骨折し、動けない状態になっている・・・と、被災の状況がまず描かれます。
なので、観客としては、いきなり物語の渦中に放り出されたような感じで、ものすごいストレスからはじまります。
そして、先に書いたような出帆~被災までの経緯が、被災後のサバイバル描写と交互に描かれます。
このつくりは巧みで、ふたりの出逢いから順番に描いていったとすると、サバイバル描写は同じような描写の繰り返しになるし、出帆までは観ていて飽きるだろうから。
極限状況と幸せな状況を交互に描くことで、それまでの幸せ感も深まるし、サバイバルの緊張感も途切れない。
また、この手のサバイバル映画では、得てして被災する原因が、主人公の無鉄砲や無軌道にあって残念なことが少なくないのだけれど、この映画では、ふたりが豪華ヨットを回航する理由も納得がいくもので、依頼する中年夫婦の口ぶりからもリチャードが相当なセイラーであることも伝わるし、タミーの操舵も様になっていることが描かれているので、残念に思うことはありませんでした。
そして、最終的には、41日目に救出されるわけですが、その前にひとつ、あっと驚くような映画的仕掛けが隠されており、それを隠すのにも、過去の幸せ描写とサバイバル描写を交互に描くのは役立っているように思いました。
ロバート・リチャードソンのカメラによる海原の動と静の対比も見事。
共同で製作も兼務している主演のシェイリーン・ウッドリー、熱演です。
監督はアイスランド出身のバルタザール・コルマウクル。