「つなぎ」ヘレディタリー 継承 abokado0329さんの映画レビュー(感想・評価)
つなぎ
アリ・アスター監督作品。
『ボーはおそれている』を観に行きたく無くなるぐらい気持ち悪い作品でした(好き)!
ひとりで行きたくないけれど、こわがっているのみられたくないからひとりで行きたい。
さて、本作。
祖母が亡くなる。別に誰もが祖母の死別を悲しんでいるわけではない。娘でもあった母も、母の子どもたちの兄と妹も、父も。そこに祖母の恨みがあるわけでもない。けれど祖母の秘密が遺品整理で開いていく。狂気が満ちていく。
でも別に元から家族が「正常」だったわけではない。母は夢遊病を患って精神的に不安定だし、妹も内向的でチック症を患っているからちょっとこわい。お世辞にも可愛いとは言えない。そんな妹を事故で死なせて兄も狂いだしていく。その環境に居続け、第三者の助けを借りない父もどうかしている。狂気が狂気を呼んで、どんどん家族を壊していく。皆が眠れなくなる。悪夢みたいな現実を生きないといけない。そしてその崩壊は、祖母が信仰していた悪魔崇拝のカルト宗教の儀式に通じていたのだった。
どこにも救いがない。救いを求める宗教が狂っているのだからどうしようもない。兄に王位が「継承」されるが、父母は首をふっとばして死んでいるし、兄自身も傷だらけのボロボロだ。
家族をつなぐ絆。そんな「つなぎ」を果たす母のミニチュアの断面は、絆の代わりにカルト宗教の世界とを繋ぎ、狂気と死を招いて、家族を崩壊に向かわせるのだからあまりにも不条理だ。
このようなカルト宗教の世界観が導入され、現実で白昼夢みたいな狂気をもたらす感じは次の『ミッド・サマー』に引き継がれているから、さらに次の『ボーは~』どうなんでしょう。
こわいからみたくない。けれどアリ・アスターの狂気に浸りたいから、はやく観に行きたい。