「心無い人々」500ページの夢の束 odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
心無い人々
この作家は心の機微が分かっておらず、NYタイムズ紙に載った自閉症の子がロード・オブ・ザ・リングの噺を作るのが得意という記事に触発されてスタートレックで真似ただけ、着想だけで主人公をいたわる真心が感じられない。なんとも爽やかさに欠け達成感と言ったカルシスもなく些細な毒気だけが際立つ悲しい映画でした。
問題を抱えながらも健気に生きる少女、誰でも幸せを願ってしまうし夢も叶えてあげたいと思うでしょう。そんな感情移入をさせておいて主人公を苦しめるキャラクターの愚劣なこと、情の無いバスの運転手、一見人のよさそうな母子が強盗だったり値段を誤魔化すレジの店員、看守のような看護師、マニュアルしか頭にない映画会社のオフィーサーなどなど些細な悪意が殺人鬼より酷く思えてしまうではありませんか。多少の善人は出てきます、バイト先の友人やクリンゴン語を話せる警官、親切な老婆もなどいますが申し訳程度。致命的なのはウェンディーですらピートの餌を買うのではなく自分のお菓子(スニッカーズ)を買う行為、あれだけ慕ってついてきた子犬なのだからもっと大事にしているシーンが欲しい。しかも大事な脚本を道路に散乱させるわざとらしいアクシデント、普通、綴じるとか封筒にくらい入れておくでしょう、気を揉ませたいのはドラマの定石としても工夫が無さすぎ。童話でも狼や魔女が出てくるし世の中はそんなに甘くないと言いたいのでしょう。それでも最後くらい、優賞は無理としてもスポック賞のような特別な賞に選ばれるとかせめてものご褒美位あっても良かった。
心温まるエピソードもカタルシスもなく姉夫婦でさえ思い出のピアノを用済みのゴミのように雨ざらしにする無神経さ、これではウェンディーが姉夫婦と幸せにやっていけるとは思えません、ピアノを戻すシーンは欲しかった。監督は自身もポリオを患ったから自閉症の子を忠実に描く方に腐心したのでしょう、夢や希望を語るならディズニーに創って欲しかった。