「でも、、、苦しい」熱狂宣言 FMovさんの映画レビュー(感想・評価)
でも、、、苦しい
パーキンソン病を患う大会社のトップ、松村厚久さんのオンオフを包み隠さず切り取った、奥田和由監督渾身のドキュメンタリー映画。
オープニングから衝撃的だった。恐らく、彼が一番調子が悪かった時期の映像と思われるが、、壇上に立ち、マイクを持って話しているが、何を言っているのか聞き取れない。
彼はもともとは健康体だったが、30代のある日突然、発病した。もし、自分の会社の社長が急に病に倒れたらどうなるか。自分はどうするか。想像せずにはいられなかった。
「松村厚久は、こんなもんじゃない」と、彼は自分自身を奮い立たせ、最前線に立ち続ける。
そしてまわりの社員たちは彼をこう表現する。まわりを穏やかにする、全力で人を喜ばせようとする純粋なひと、と。彼らは、本当に松村さんを慕っているからこそ、彼とともに歩む道を選んだ。涙を流し抱き合う姿、無言で松村さんに手を貸す姿に心を打たれた。
だが、松村さんは自分自身を「幸せ者だ」と話す一方で、本音をこぼすシーンは、涙なしには観られなかった。
「でも、、、苦しい」
彼が椅子からずり落ちてしまっても気づかない隣のひと。罵詈雑言を浴びせる株主。その怒り、悲しみをぶつける先がないという。あと50%でも、体力が回復すれば、自分はもっとできるのに。勝てるのに。120%、やれるのに。
どんなにもどかしく、悔しいだろう。
しかし、どんなに苦しくとも社員の前では弱音を吐かず、いつも誰かに何かしてあげることを考えている。
監督が劇中に、彼をひとつのカメラではとらえきれない、というようなことを仰っていたが、全くその通りである。人とは、ひとつの面のみを見ただけでは、到底把握しきれない不思議な生き物である。
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