英国総督 最後の家のレビュー・感想・評価
全5件を表示
独立がゴールではない
総督の家での、インド独立前夜の人間模様を描いた一作。
よく出来すぎていると感じなくもない(総督一家のキャラクターやラストのアーリアとの再会など)。
それでも短い時間の中で多くの人々を描いて上手くまとまっていたと思う。マウントバッテン卿、チャーチル、ネルー、ガンジー、ジンナー、そして総督の家で働く人たち…
そして暴動、虐殺の数々。
総督の家の中でも資産を全てインドとパキスタンに分けているのには驚いた。
国境の発表は独立を人々が祝ったあと。
その後に移動を余儀なくされた人々。独立で全てが収まるわけではない、現実が待っている。それでもアーリアとの再会に希望を託したエンディングだったのだと思う。
観るとためになる
インド映画好きじゃなくても今後のためにためになるので観るといいと思う。
どこの国の映画でも、歴史を知っていると話もすんなり入ってくる。逆に知らないとなかなか理解出来ない作品も多いと痛感している。
ジートとアーリアの恋愛はわりとおまけ的なのかもしれないが、ジートが再会して直ぐにアーリアにつきまとう(失礼)もんだから、ちょっと引いてしまった。まぁ、長年想ってた彼女に会えたから、なんだろうけど。ちょっとしつこい。
アーリアがマイク引っ張ってジートを呼ぶシーン、すげぇと思った(笑)
それにしても総督の奥さんがすごいな。一見冷たそうだけど、慈悲深い。総督が、自分より政治に詳しくて(苦笑)みたいなシーンがあったけど、行動力もあり、政治家に向いてそう。猫背が特徴的だった。
しかし300年も支配してたんだね…。
植民地って言葉がすでに悲しい歴史の代名詞にさえ思えてくる。
見応えのある作品だった。
史実を知らなかった
恥ずかしながら、インドとパキスタンの歴史的背景を知らなかった。総督邸で使用人として働く若き男女が愛し合いながらもそれぞれ宗教が違い、インド、パキスタンで揺れ動く激動の狭間で引き裂かれることを通して、インドパキスタンの分離独立を描く社会派映画。300年にわたり支配していたイギリスがそもそも仲違いさせ、統治し、また自国の将来にも有益になるよう分離させるという、大国の戦略によって、何百万人もの命が失われ、未だに紛争の火種は残ったままだ。ジリアン・アンダーソンは久々に見た。
インド凄惨な日々を知る
昔旅したインドの歴史。
インドが分かれてパキスタンになった、という事実だけは知っていたけれど、ここまでの凄惨な大騒動になっていたとは、今の今まで全く知りませんでした。
植民地支配していた国の都合で、これまでの隣人が敵と化すとか、信じられない話だけど、実際にそれを経験した人が撮ったものとなれば、疑う余地はありません。いい勉強になりました。
恋に落ちる若者たちに関しては演技が薄くて、展開もなんか陳腐だけど(お父さん!気づいた時点で娘にとどまるように言ったらよかったのに!)、数多生まれた出来事の中の一例、として受け止めます。
国家の分離と、恋人の別離。たくさんの犠牲を払った悲しい歴史ドラマ
インドを旅行したことがあっても、隣国のひとつがパキスタンということを知らないなんて笑い話はありそうなもの。常識なんてくそくらえ。知らないんだから仕方ないとして、そんな人でもこの映画でインド独立の歴史的背景の勉強が少しできるかもしれない。
世界史でも"東インド会社"という言葉で登場するインドは、独立して共和国に移行するまでは英連邦王国(イギリス領)。映画のタイトルである、"Viceroy"(ヴァイスロイ)は、王様の代理で他国を統治する総督のこと。
主人公のルイス・マウントバッテン総督は、ヴィクトリア女王の曾孫でイギリス王族としてインド派遣され、最後のインド統治者になった人である。
日本軍によって占領間近だったインドは、太平洋戦争の終結によって戦勝国イギリスの手に戻ってきたものの、イギリスにそれを支配しつづける力は残っていなかった。
マウントバッテン総督は、事実上インド独立を成立させるために仕向けられて派遣されているが、インド独立運動では、国内の宗教対立が激しく、各地で暴動が起きていた。
"インド独立の父"とされるマハトマ・ガンディーは、宗教の壁を越えた"統一インド"を目指してたが、各指導者による意見はぶつかっていた。
結局、マウントバッテン総督は、イスラム教徒でパキスタンの分離を唱えるジンナー氏に押し切られて、インドとパキスタンの2国に分離して独立を認めることとなる。この映画ではそのインド・パキスタン分離独立計画の、陰の首謀者はチャーチルであるとされる。
この映画がフィクションとして面白いのは、史実の部分はちゃんと押さえながらも、独立前夜のインド人青年と娘の恋愛ストーリーを仕込んでいることだ。
インドのデリーにある総督の宮殿では、 ヒンズー教、イスラム教、シーク教などインド国民を代表するそれぞれの民族が使用人として働いていた。まもなく分離独立する祖国の中で、使用人たちはパキスタン国籍か、インド国籍を選ばなければならない。
ヒンズー教徒で単なる使用人の青年と、ムスリムの家庭に育った令嬢の恋。宗教の違いを超えて愛し合う2人は、家族のために別々の国籍を選ばざるを得ない。国家としての"分離独立"と、歴史に翻弄される国民レベルの"別離"を切なく描いている。なかなかドラマティックな作品である。
(2018/8/15/新宿武蔵野館/シネスコ/字幕:チオキ真理)
全5件を表示