「イギリスのしたたかさに振り回されるインド」英国総督 最後の家 とえさんの映画レビュー(感想・評価)
イギリスのしたたかさに振り回されるインド
正直、映画を見る前は、ポスターの暖色系の感じからして、もっとのほほんとした映画かと思った
観始めたら、とんでもない
しっかり社会派の映画だった
人間って、どうして仲良くできないんだろう…
と思いつつ、最後にはボロボロ泣いてしまった
1947年
インド独立の年、最後の英国総督として、マウントバッテン卿が赴任
マウントバッテン卿は、インドを平和な状態で引き渡すために、イスラム教とヒンズー教の指導者と話し合いの場を持つが、宗教間の対立は激化するばかりで…
時代的には、チャーチルが首相で、現エリザベス女王のお父さんのジョージ6世(「英国王のスピーチ」の王様)の頃なので、映画好きな人には、割と観やすい時代かと思った
それまでインドを統治していたイギリスの総督 マウントバッテン卿は、平和な状態でインドを解放しようとするが
既に、国はイスラム教、ヒンズー教、シーク教で分裂状態だった
そのため、イギリスはイスラム教の人たちが暮らす国、パキスタンを作る提案をする
パキスタンという国は、こうして作られたのか!
という、私にとっては、学びの映画だった
しかし、その裏には
イギリスが、利益を生み出すためのしたたかな試算があって
そのために、宗教間の対立を放置していたという告発をした映画でもある
その結果、多くの人々が、信仰する宗教によって住む場所を制限され、強制的に移住させられることになった
もしも、お互いの人種や宗教を尊重していれば
失わなくてもいい命がたくさんあったかと思うと、それだけで泣けてしまう
ここで描かれている1組のカップルは、その運命に巻き込まれてしまう
彼らは、その時、引き裂かれた人々の象徴である
それは、明らかにイギリスの黒歴史であって
この時のパキスタン建国の経緯を思うと、「パキスタン人はイギリスに入国禁止」なんて言えないじゃないかと思ってしまった
けれど、こういう黒歴史をそのまま映画化するところに、イギリスの懐の深さがあるのかもしれない
ちなみに、マウントバッテン卿の奥さんは、X-ファイルのスカリーなんだけど、エンドロールで名前観るまで気付かなかった!!