「ようこそ、哀惜食堂へ…。ぶっ飛んだ世界観がグラシオーソ!」Diner ダイナー たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
ようこそ、哀惜食堂へ…。ぶっ飛んだ世界観がグラシオーソ!
殺し屋専用の食堂「ダイナー」で働くことになった女性、オオバカナコが体験する狂気的な世界と、そこでの経験を通して成長する彼女の姿が描かれるスリラー・アクション。
監督/脚本は『さくらん』『ヘルタースケルター』の蜷川実花。
「ダイナー」の店主ボンベロを演じるのは『DEATH NOTE』シリーズや『借りぐらしのアリエッティ』の藤原竜也。
主人公オオバカナコを演じるのは『オオカミ少女と黒王子』『チワワちゃん』の玉城ティナ。
店の常連である殺し屋のスキンを演じるのは『エイプリルフールズ』『64』シリーズの窪田正孝。
子供の体をした殺し屋のキッドを演じるのは『GANTZ』シリーズや『キングダム』の本郷奏多。
オオバカナコが「ダイナー」で働くことになるきっかけとなった強盗の一人、カウボーイを演じるのは『海猿』シリーズや『シン・ゴジラ』の斎藤工。
組織の幹部の一人、マテバを演じるのは『銀魂』シリーズや『君の膵臓をたべたい』の小栗旬。
旅行代理店のムカつく店員を演じるのは『亜人』『嘘を愛する女』の、元AKB48のメンバー川栄李奈。
蜷川実花監督の作家性が前面に押し出されている、マッドでファンキーでドラッギーな世界観こそが本作の魅力🌸✨
舞台はどうやら現代の日本のようなのだが、ボンベロだのスキンだのマテバだのという名前を見ればわかるように、リアリティの一切ないファンタジーな世界で物語は展開される。
「ダイナー」に集う殺し屋の皆さんは、完全にどうかしてしまっている漫画みたいな方々なので、下手なリアリティを持って世界観を構築するよりも、完全なファンタジー世界で物語を描いた方が良いと判断したのだろう。
蜷川監督の過剰なまでに耽美的な映像が、そのファンタジックでドラッギーな世界観にマッチしており、普通ならツッコミを入れたくなる展開でもスッと飲み込むことができて中々に楽しかった🌺🌸😆🌸🌺✨
物語としてはオオバカナコという心を閉ざした女性が、ダイナーに集う人々との交流を通して回復し成長するという、まぁ王道な設定ではある。
この軸がブレることなく、最初から最後まで一貫して描かれていたので、破茶滅茶な映画でありながらなんかいい話を観たような気持ちにさせてくれる。
今更マトリックス的な銃撃戦は古いだろ。とか、登場したキャラクターの名前が画面に描かれる演出がなんかパチスロみたいだな。とか、菊千代のCG感が強すぎて犬に見えねえ。とか、普通に考えるとマイナス要素になるようなイモっぽいところもあるのだが、それも世界観に上手く溶け込んでいたのでそれほど気にならなかった。
むしろTVゲームみたいな感じがしてなかなか楽しい👍
ただ、殺し屋を扱った作品なのだから、もっと残虐だったり悪趣味だったりするスプラッター表現は見せて欲しかった。
ゴルフクラブで頭をスイングされ、気を失うカナコ。いやいや、そんなことされたらもっと顔がグチャグチャになっているでしょうに。
ヒロインの顔は傷つけられなかったんだろうけど、だったらゴルフクラブで殴打するなんて描写ではなく、薬で眠らせるとかでよかったんじゃないんですかね?
キッドの攻撃も、舐めプしていたとはいえやっぱりヌルい。
本郷奏多の顔をした子供という、めちゃくちゃ気持ち悪いキャラクターでコイツ自体は結構面白かったし、菊千代に頭をかじられたところとか普通に笑っちゃったんだけど、もっとコイツの猟奇的な側面を描いて欲しかった。
それと、ショットガンで頭を撃ち抜かれたら、多分頭ごと吹っ飛ぶと思うのですが…。やっぱり組織の大幹部ともなると頭も硬いんですかなぁ。
上記した以外のバイオレンスも、全体的に温度がヌルめ。せめてR15指定くらいの残虐さは欲しかった。
エロチックな表現もめちゃくちゃヌルい。カナコが輪姦されそうになるところとか、もっとイヤらしく描いた方が映画にメリハリが出来ると思うのだが。この辺は事務所の問題かね。
後半なんかはドンパチ多めで楽しいのだが、中盤はちょっと中弛みしているように感じられる。
90分くらいのランタイムにして、もっとスピーディーに物語を展開させて欲しかった。
正直、ちょっと退屈に感じるところも多かった🥱
狂った世界観なので大抵の脚本のアラはスルー出来る。
それでもカナコが金庫のロックをたまたま解除出来ました、という展開はちょっと飲み込みづらい。
なんらかの方法で解除番号を入手したとかならともかくさぁ。
あともう気になってしょうがないのは菊千代。
一流料理人が厨房に犬を入れるなよバカ!!
それとさぁ、敵の追っ手が迫っているというというのに、何をイチャコラやっとんねん。
緊急事態なのにハンバーガーの作り方を教える、という突飛さは面白い。ここは映画のトーンにもあっているし良いと思うんだけど、問題はその後。
通気口を通って逃げようとする2人。背後からは銃声が聞こえる。
お前は先に行け、俺は後から行く…。嫌よ嫌よ嫌なのよー!いいから早く行けー!からのブチュー💋👨❤️💋👨
…いやいや、一分一秒を争う場面で、立ち止まりながら会話するなよ。
大体あの2人、いつの間に恋愛感情が芽生えていたんだよ。無理矢理恋愛描写を突っ込まれると萎えるのよ。
邦画、洋画問わず、割とこういう展開の映画は多いんだけども、生死がかかっているという緊張感が削がれるので辞めていただきたい。
エンディング、カナコが開いた「ダイナー」に死んだと思われていたボンベロと菊千代が来店するという展開。
正直ここはすごくよかった。バカバカしくて良かったとかではなく、普通に上手いなぁ〜、思いました。
「想像力のないものは死ね」というボンベロ。
カナコは「ダイナー」での経験を通して、自分は必要のない人間なんだ、という思い込みから脱却できた。
つまり、本作で描かれる彼女の成長とは何かというと、「想像力」を獲得したということ。
そして、カナコが「ダイナー」を開いたメキシコで行われているのは「死者の日」の仮装行列。
ピクサーの『リメンバー・ミー』によって日本での知名度が高まったこのお祭り。日本のお盆と同じく、死者に思い馳せ、その魂を迎え入れるという行事である。
想像力を手に入れたカナコが「死者の日」に出会うのは…、という切ない結末であることを、説明的に描くのではなく、そっと示唆するだけに留めているという上品さは美しい。
もちろん、ボンベロが超人的な生命力により生きながらえた、というハッピーエンドとして受け止めることも出来る訳で、人によってエンディングの意味は変わってくるだろう。
解釈に幅がある物語は、それだけで良いものである。
映像こそ毒々しいが、中身は王道のエンターテイメント。
玉城ティナのメイド姿をたっぷりと拝める、彼女のファンにもオススメな一作✨🌸🌺🌸🌺✨
おはようございます。
相変わらず、素晴らしいレビューです。
突っ込みどころは、ありますが、藤原竜也が大好きな自分にとっては、目の保養になった作品です。
ラストは良いですよね。