「話を黙って聞き服を褒めうまい飯を食わせろ」ハナレイ・ベイ 野川新栄さんの映画レビュー(感想・評価)
話を黙って聞き服を褒めうまい飯を食わせろ
原作既読
原作は『風の歌を聴け』『トニー滝谷』『ノルウェーの森』『ドライブ・マイ・カー』の村上春樹
監督と脚本は『トイレのピエタ』『Pure Japanese』の松永大司
サーファーの息子がハワイで鮫に襲われ死んだ
母サチは命日の時期になると毎年ハワイに渡り事故現場の海を眺めながら浜辺に椅子を置き座って本を読む
それを10年も続けている
現地で若い日本人男性2人組と出会い親しくなる
ある日その2人がサーフィンをしているとサチがよく座る浜辺の近くで片足のサーファーを見かけたという
息子の亡霊なのか
サチには見えない
会いたいのに会えない
喪失感を南の島で埋めようとする話で邦画なら『ぱいかじ南海作戦』を思い出す
吉田羊と阿部サダヲには芸風としてかなり違いがあるためか作品も似て非なるもの
大衆受けするのは『ぱいかじ』の方だろう
ピアノバーを経営している主人公サチに吉田羊
亡くなった息子タカシにEXILE系の人
カウアイ島でサチが出会った日本人サーファーで大学生の高橋に村上虹郎
吉田羊の元夫になぜか栗原類
舞台の殆どがカフアイ島のせいか英語の台詞が多く邦画だが大量の字幕を読むことになる
サチと高橋が出会ったばかりで早々にフランク
アメリカンナイズな日本人としては当たり前なんだろうが岩手と宮城の県境付近で育った自分は面食らう
スーパーでの場面は美川憲一とちあきなおみが共演したCMを思い出した
それに親しい仲にも礼儀を重んじる日本で「童貞でしょ」はない
もう少しオブラートに包むよね
逆にコンパで「おまえ処女だろ」なんて放言するデリカシーがない男がいたらどうなるかって話よ
村上春樹の短編集の一つ
短編の方が映画にしやすいか
彼の作品のなかではどちらかといえばマイナー
彼の文体を楽しむために読むせいかこの作品に限らずあらすじはあまり覚えていない
その点でいうとアンチ村上春樹の批評は例外なく駄文で退屈でなんの才能も感じられない
吉田羊が好きで好きで堪らない人は楽しめると思う
日々の仕事に追われ南の島でエンジョイしたいと願う人には癒しになるだろう
村上春樹ファンが楽しめるかどうかは微妙
アンチ村上春樹は観なくていいし語る必要もない
ある種の人にとってはアンニュイに感じるかもしれない
僕は眠くならなかったが途中で寝てしまう人がいても不思議ではない内容
大林宣彦監督の遺作に比べたらコンパクトで脚本はそれなりにまとまっているし少なくとも苦痛に感じることはない
つまらない映画は邦画に限ったことじゃない
海外の映画にだって腐るほどたくさんある
邦画嫌いはおそらく日本の嫌な面しか見えず海外のクールな面しか見えない障碍を抱えているのかもしれない