劇場公開日 2019年2月15日

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「後味のすっきりとした佳作」フォルトゥナの瞳 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5後味のすっきりとした佳作

2019年2月20日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

 冒頭のロールで原作百田尚樹という文字が出て少し驚いた。百田尚樹は「南京大虐殺はなかった」などと発言しているアベ応援団の一人である。席を立とうかと一瞬迷ったが、原作者の人格と映画作品は別であると思い直した。
 ストーリーはかなりのご都合主義で、展開に無理があるシーンもいくつかあったが、神木隆之介の達者な演技でなんとかカバーできていた。演出の力も大きかったと思う。脇役陣の配役も十分で、時任三郎と斉藤由貴の夫婦が作品にリアリティをもたらしている。
 相手役の葵の有村架純はもう少し奥行きのある演技をしてほしかった気がする。主人公の年齢から推定すると葵は25か26歳くらいの筈だが、普段着の女子高生くらいにしか見えなかった。原作の人物造形が浅かったのかもしれない。素直でとても可愛い女性の役としては、十分な演技ではあった。決して下手ではない。主人公に癒しと安らぎを与える女性で、可愛すぎて何度か泣けそうになった。
 原作の役割は特殊な目を持った主人公というアイデアが主体だろう。主人公を英雄扱いしない演出は好感が持てる。伏線はすべて拾われており、後味のすっきりとした佳作である。

耶馬英彦