「期待どおりだったがまだ物足りない。」劇場版 SHIROBAKO トーリさんの映画レビュー(感想・評価)
期待どおりだったがまだ物足りない。
TVシリーズのその後を描いた待望の劇場版。
もう一度彼女らの動く姿を見たいという素直な気持ちで観るのが吉。
4年後ということでもっと各登場人物の生活や人間関係が激変して
いるのではと思っていたら、個人的にはそこまでのインパクトは起きて
いなかった。だがしかし、武蔵野アニメーションはまさかの事態から
厳しい状況に置かれており、ツタに覆われ見る影もない社屋の描写など
順風満帆の時はいいが一寸先は闇なアニメ業界と言わんばかりである。
ヒロイン達も色々環境の変化はあり、例えば坂木しずか(ずかちゃん)
は声優としてだけでなく色々お仕事がもらえているし、今井みどり
(りーちゃん)は脚本家として舞茸さんからも一定認められるまでに
成長している中、それぞれが色々な仕事上の悩みを抱え・・・といった
導入部。
で、主人公宮森あおいが悩み、迷い、そこから決断し、仲間と立ち向か
いまた一つ前へ進んで行くという、オーソドックスな?展開だった。
前半特に宮森の心境にフォーカスした色が濃い気がしたが、アニメ業界
に生きる面々の群像劇たるSHIROBAKOなので(TVシリーズでひとと
おり描いている事もあってか、今回は制作にかかる各作業のシーンが
少なめに感じた。が、各作業の担当者が打ち合わせにおいてそれぞれに
見せるこだわり(作画とCGの兼ね合いとかBGMの雰囲気とか脚本とか)
は健在で、アニメ制作現場いいなぁと思わせる会話感はさすがである。
TVシリーズを見返したくなった。
また今回の劇中の架空作品“SIVA”について(さすがに第三飛行少女隊
には及ばないまでも)、アニメ制作がキモなので劇中作品とは思えない
こだわった作り。完成したはいいがラストが物足りないからつくり直す
と言い出した時は、残り三週間での壮絶なデスマーチを見せてくれるの
かと思いきやそこは省略されており、やはり尺の問題か。
尺に限りのあるなか武蔵野アニメーションの面々をまんべんなく登場
させているが、例えば絵麻タソ・矢野ちん・井口ちゃんあたりをもっと
観たかった人には物足りなく感じたかも知れない。ゴスロリ様は登場
は短かったが登場シチュエーションにニヤリと出来たので個人的には
OKである。それにしても木下監督の腹をたぷたぷさせるよりもっと
画面に映すものがあるだろうと思わないではなかった。
特に、今回の新たな登場人物である宮井楓、いい感じに好きなキャラ
なのだが、あおいとハシゴ酒してるのと着物姿で討ち入りしてるシーン
以外では特段の活躍がなく、勿体無い役どころだったように思う。
それとも今後また続編に期待してよいのだろうか?
業界に近い人ほどこの作品への評価は分かれるのかなと思ったりする
のだが、とりあえずいちファン、視聴者としてはこの手の作品は
大好物なので観れただけで幸せではある。
もっともっと続きのエピソードを見たい気分で、上映後
席を立つのが惜しく思えた。そうはいっても現実に戻るしかなく、
ケーキ屋でモンブランを買って帰った。以上。