リチャード・リンクレイター 職業:映画監督のレビュー・感想・評価
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感性に届くドキュメンタリー
本当に見て良かった!大好きな「ビフォア・サンライズ」の監督リチャード・リンクレータ-の神髄に追ったドキュメンタリー。
まず彼がハリウッドとは距離を置いて映画制作していたとは知らなかった。
それに彼が映画をヒットさせちゃったことにより、彼が作った造語が世間に認知され、辞書に採用された話は仰天。
「ビフォア・サンライズ」~舞台をウィーンにした理由は、こういう訳だったの!! あの二人(イーサンホークとデルピー)は実は~だった!?(言いたいけど言えない...) 「ビフォア」シリーズの裏話を聞けただけでも、得した気分。
「スクール オブ ロック」も「6才のボクが大人になるまで」も彼の感性を深く知ったおかげで愛おしい作品に変わった。
夢を見続けることって才能だと思います
アメリカにおいての映画の殿堂と言えば、誰もが『ハリウッド』を連想するであろうが、彼はハリウッドから遠ざかり、商業映画には全く興味を持たず、自分の思う作品を作りたいと努力を続ける職人のような異端児監督さんです。
彼には溢れる映画制作への夢があり、「ハリウッドに近づけば、夢はビジネスになってしまう。僕の夢はビジネスにはしたくない」という信条をモットーとしており、どの作品にも共通して、『時間』の経過を意識してシナリオを作り、『時間』が進行していることを観客に意識させるよう、登場人物を描いていることが特徴的です。
登場人物は、たいていが其処此処に居るありふれた人々。普通の人々が送る日常を撮り、周囲で起こるちょっとした出来事を描いているだけなので、ハリウッド的な興行成績の高いドラマティックなものを期待している人々からの批判も少なくないですが、何処にでもありそうな日常にこそ、私達が観るべきものがあるという価値を感じさせてくれる作品を、流行や権力に恐れず、世に送り続けている所が彼の魅力であることが、このドキュメンタリーでよく分かります。
この映像を観ると、以前は淡々とした印象に思えていた作品も、そして、これから観るであろう作品も、きっと視点が変わって、意味を持って観れるようになってくるであろうと感じました。私は、大好きな監督さんなので、この映像を多くの人に観てもらって、彼の良さに触れて貰いたいなぁ〜と思いました。
「才能」とは、行動力と実現力である。
このドキュメンタリーを見ながら、数年前のアカデミー賞で「6才のボクが、大人になるまで。」が作品賞を逃し、監督賞も別の監督の名前が呼ばれた時のショックと、その後数日に亘って(私自身とは直接の関係もないというのに)しばらく落ち込んでいたことを思い出した。それほどにリチャード・リンクレイター監督は、私のお気に入りの監督の一人だ。この映画は、リンクレイター監督が、映画監督として誕生し、「エブリバディ・ウォンツ・サム」を製作するに至るまでの軌跡を辿るドキュメンタリー。リンクレイター監督の素顔を覗くというよりも、映画監督としてのリンクレイター監督の実に正直な等身大を見るような映画だった。
私のような凡人からすると、映画監督でも芸術家でも小説家でも音楽家でも、作品を創造する方々には私などとは違った才能が有り、余程クリエイティビティに長けた人たちなのだろう、と安易に思ってしまう。すべてを才能のせいにする方が、凡人の言い訳としては簡単だからだ。しかし私は、今回リチャード・リンクレイター監督のドキュメンタリーを見ながら、そうか、何かを創造する人たちが持つ「才能」というのは、クリエイティビティではないしセンスでもなく、行動力と実現力なのだということをひしひしと感じた。クリエイティビティやセンスは、後から磨くこともできる。経験から身に着けることもできるし、有能なスタッフを揃えることや優れた機材を使うことで補うこともできる。ただ、行動力と実行力は違う。実現したい目標が生まれた時、そこにたどり着くために自分がすべきことを逆算していく計算力。これを作りたいと思った時に、よしやろう!と一歩踏み出す力。それだけは、だれの力を借りるでも経験に頼るでもなく、自己の中から生み出さなければならない。きっとこの世に数多いる有能なクリエイターたちには、その行動力と実行力があり、そしてその力を持たない私のような人間が言い訳のように「あの人には才能があるから」と語るのだということを、まざまざと見せつけられた気がした。
テキサス・オースティンで映画製作を開始し、ハリウッドからは常に一定の距離を保ちつつ映画を撮り続けたリンクレイター監督。そうだからこそ、ハリウッドの祭典であるアカデミー賞では冷遇されてしまったという側面もあったのかもしれない。映画界で最も権威のある賞と言われつつも、所詮は人が人を選ぶ賞である。人には思い入れや情があるし、過去にも思い入れや情でオスカーを受賞した(あるいは逃した)例は数えきれないほどある。
私はこのドキュメンタリーを見て、あの年、リンクレイター監督と「6才のボク」がオスカーを受賞出来なかったことは必然であり、寧ろオスカーを逃して正解だったと思えるに至った。リンクレイター監督にふさわしいのはオスカー像ではなく、彼が彼らしく撮った作品そのものなのだと、熱心なファンとして今素直にそう思う。
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