「今の時代が抱えるテーマを巧みに盛り込み、大きな気づきを与えてくれる」カランコエの花 ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)
今の時代が抱えるテーマを巧みに盛り込み、大きな気づきを与えてくれる
たった40分足らずの中編作品ながら、構成、演技、テーマ性、全てにおいて卓越した感性が貫かれた見事な作品だ。ブラスバンドの音色に合わせて緩やかに醸成されていく空気。そして親友どうしが織り成す有機的な演技の積み重ね。聞くところによると、現場で出演者たちの意見を聞きながら組み立てていったシーンも多かったとか。また、伝えるべき内容をセリフに盛り込んで、あとは即興に近い形で言葉が紡がれた場面もあったという。だからだろうか、本作からは型にはまらない自由な空気と、透明感、それにリアリティに満ちた生身のコミュニケーションをつぶさに感じ取ることができる。
そんな中で飛び出す“一つの告白”に対し、無意識に返される何気ない言葉の鋭さ。また、口にした“言葉の過ち”を自覚していく過程にも確かな巧さが光る。この悲しみは他人事ではない。いまの時代を生きるみんなの共有テーマであることを誰もが痛感せずにいられないはずだ。
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