カランコエの花のレビュー・感想・評価
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今の時代が抱えるテーマを巧みに盛り込み、大きな気づきを与えてくれる
たった40分足らずの中編作品ながら、構成、演技、テーマ性、全てにおいて卓越した感性が貫かれた見事な作品だ。ブラスバンドの音色に合わせて緩やかに醸成されていく空気。そして親友どうしが織り成す有機的な演技の積み重ね。聞くところによると、現場で出演者たちの意見を聞きながら組み立てていったシーンも多かったとか。また、伝えるべき内容をセリフに盛り込んで、あとは即興に近い形で言葉が紡がれた場面もあったという。だからだろうか、本作からは型にはまらない自由な空気と、透明感、それにリアリティに満ちた生身のコミュニケーションをつぶさに感じ取ることができる。
そんな中で飛び出す“一つの告白”に対し、無意識に返される何気ない言葉の鋭さ。また、口にした“言葉の過ち”を自覚していく過程にも確かな巧さが光る。この悲しみは他人事ではない。いまの時代を生きるみんなの共有テーマであることを誰もが痛感せずにいられないはずだ。
善意もまた時に人を傷つける
性的マイノリティに対する社会全体の理解は一昔前から比べるとだいぶ進んだのだろうと思う。メディアなどの扱いもそれなりに変化してきただろう。しかし、実生活において、人の心はすぐには変わらない。
本作はそんなリアルな生活の場での性的マイノリティへの理解の程度を見事に浮き彫りにしている。
ほとんどの人に悪気はない。最初にLGBTへの理解を促す特別授業を実施した保険の先生の行動は善意から来ている。しかし、結果的には、その善意の行動が一人の生徒を追い詰めてしまう。その生徒が思いを寄せるクラスメイトも彼女を庇おうとした発言もさらに追い打ちとなってしまう。
わずか40分の上映時間に、差別問題の根深さを見事に浮き彫りしている。悪意やわからないものへのフォビアから来るものを乗り越えても、社会にはまだ壁がある。善意もまた人と人を分断してしまうことをこの映画は見事に描いている。
こんなに売れっ子を輩出したインディーズ映画は珍しい
今田美桜さん笠松将さんとその後の売れっ子俳優を2人も輩出した珍しいインディーズ映画です。インディーズ映画は大体いつも同じ面々の俳優さんを観ることが多いので。
1時間未満の中編ですがLGBTものとしてではなく、単純に青春映画として楽しめました。
ただエンドロールで流れてくる役者さんの即興芝居だけはいただけなかったです。
先日、アウティングという言葉を初めて知った。LGBTという言葉も、...
先日、アウティングという言葉を初めて知った。LGBTという言葉も、あるということは知っている。そこにQが加わっていることもあるがそれが何を指すのかよく知らない。
そんな状況で見たけれど、俺ってどう対応するのだろうか。
今田美桜圧倒的にかわいいな。
価値観について普遍性のある傑作級作品
すごく短い作品だったけれど、今年のベスト級に面白かった。
繊細で巧妙な脚本は、LGBTを扱った作品という枠を超えた普遍性を内包しているところが素晴らしい。
LGBTの当事者であるさくらはそのことを自ら黒板に書きカミングアウトしようとした。周りの人間、特に恋する相手である今田美桜演じる主人公に受け入れてもらおうとしたからだ。
しかしその事実を知らない主人公は、さくらは違う。さくらはレズビアンじゃないと言ってしまう。
主人公はその前にさくらが辛そうにしているという話を聞いていたので、もちろん良かれと思って言ったのだ。
しかし、本当のさくらの気持ちに照らし合わせれば、さくらは自分を否定されたことになってしまう。
主人公は何かを間違えたのだ。では一体何を間違えたのだろうか。それは当人ではない人間から聞いた話を鵜呑みにしてしまったことであり、しかもそれを自分の解釈で理解しようとしてしまったことだ。
さくらが辛そうにしているという情報。辛そうにしているならば隠したいはずだという間違った理解。
極めつけはエンドロールと同時に始まる、一週間遡った7月1日。保険の先生とさくらが話している場面を目撃してしまうところ。
目撃してしまった女学生は「辛そう」と主人公に言った。本当にさくらは辛そうだったか?ものすごく明るく楽しそうに恋バナをしていただけにしか見えない。相手が同性なので慎重にという以外、普通の恋する女の子でしかなかった。恋していることを楽しいと思える普通の女の子。
しかし、目撃してしまった女学生はさくらが同性愛者だから辛いに決まっていると思い込んだのだ。
勝手にさくらを理解したつもりになって「辛そうにしている」と自分も涙を流す。
主人公が最初に受け取った情報すら間違いだったことになる。そしてこの間違った情報から勝手にさくらを理解したつもりになって、一番言ってはいけない「さくらはレズビアンじゃない」を言ってしまうことになるのだ。
つまりこれはコミュニケーションと理解についての物語で、LGBTとか関係ない普遍性がある。
相手の話をちゃんと聞かず、勝手に思い込んで、決めつけて、理解したつもりになることの危険性。
ジェンダーについてだけでなく多様な「考え方」が存在する近年において、自身の価値観だけで物事を判断してしまう危険性と、相手をよく知ろうとしなければならないという相互理解について、よく描かれている。
注意しなければいけないのは、本作が道徳の授業で観られるような作品だといい、LGBTの人は誰もが受け入れてもらいたいと願っていると「決めつけて」しまうことだろう。
人は一人ひとり違う。そのことをよく理解しなければならない。
色々と衝撃!役者が美しく描かれた作品!
色々と衝撃を受けました...!
「このクラスの誰かがLGBTかもしれない」
ある日、突然始まる謎の犯人探し。
結論はどうなるんだろうと、一気に引き込まれました。
他愛もない学校生活や家庭の日常が、
上品かつ自然に描かれているのが好きです。
また、役者陣が全員美しく、
今や最前線で活躍する今田美桜や笠松将らを
若手の段階から起用していることも驚きました。
無駄なシーンが一切なく、
セリフでも語りすぎない点など
40分に魅力が詰まりすぎていました。
つま(千里?)ちゃん(女の子のお友達)が悪い。 サクラちゃんもメソ...
つま(千里?)ちゃん(女の子のお友達)が悪い。
サクラちゃんもメソメソするな。って僕は思う。
僕自身の高2の当時、僕はゲイでは無いが、男にも女にも余り相手にされていなかったので、異性に興味はあったが、高校時代はいつも一人だった。
LGBTよりも、ロリコンって言われる方が嫌だった。でも、僕が特別と思わなかったけど。
まぁ、大学へ進学して、咲かぬ花も少しは咲いたが、相変わらず、一人でいるほうが良かった。引き続き、僕が特別と思わなかったけどね。
高校時代に思いをうちあけて、相手が男でも女でも、花が咲く(恋が実る)なんてほとんど無いと思う。サクラちゃんには言いたい。『もう少し我慢して、高校を卒業してからでも、間に合う♥君はまだ若い♥』って言いたい。あてにらない俯瞰した教師なんかに相談すべきではない。そう言った経験の無い教師に相談すると、寧ろ被害に合う事もある。
さて、僕の知り合いの女性で、Bの人を知っているが、僕はその人を凄く尊敬していた。65歳のジジイを相手にして、酒を飲みに行った事もある。Bと分かっていたが、全く異性を感じさせない人だった。教師見たいなインテリ女性だったが。俯瞰していなかったので、教わる事は沢山あった。また、メソメソなんてしてないし、堂々としていた。そんなんでいいんじゃないかなぁ。僕は天地天命に誓って、ゲイではないが、カポーティも宮沢賢治も、その人柄も含めて好きである。
でも、この映画の様に、
高校二年生位の『はなたれ小僧』に『LGBTを理解しろ』って、言う事の方が大変に難しい事だと思う。
この映画は残念ながら男目線な話だと思うが。相手の思いに答えられなくても、責任を感じて泣くことは無いと思うのだが。
公開当時に見るべき作品だったのかも?
何をどう伝えたかったのか全く分からず
ラストを2度見しましたが、共感ゼロでした。
理解が進んだ2023年だからでしょうか?
内容が薄く 苦悩に対する共感がわかなかったし、苦悩のあげく起こした行動にも共感できなかった
カランコエの花言葉 何から主人公の彼女を守るのか?
怒りが湧いた
何より怒りが湧いた。
保健の先生に。
いつも一緒にいてどういうクラスか知らないから仕方ないのだ。そう自分に言い聞かせても、あの、一方的でセンシティブな内容なのになんの配慮もなくいきなり仕掛けた授業は、もはや巨大な爆弾でしかないと思った…。
また、学校という建物自体、マイノリティの人をどうするかの受け皿が全くないわけではないが、あまり配慮をすることができてない作りだなとは思う。壁に耳あり障子に目あり。
(例えば離れがあったり、ヤ○ザのような強面のボディーガードがついていたり、法律に詳しい専門家が常駐していたり。これくらいしないと守れないのでは…? なんて、夢物語でしかないですが。。)
ラストは納得のいくものだった、それ以外ないと思った。
桜さんをずっと応援したいと思った。
今年1番衝撃を受けた。最も衝撃を受けた場面と、LGBTに関する7年前からの変化について(追記 舞台挨拶で監督が7年前からの変化が感じられるかもと言ってたので)
残念なことを始めに言ってしまうと、LGBTで悩んでる者の悩みは7年前も今も全く変わらないと思う。回り(LGBTで悩んでいない者)は僅かだが変化したかも。
1番衝撃を受けたのは黒板の場面だ。
「桜ちゃんはレズビアンなんかじゃない」と叫ぶ月乃 (今田美桜)。 「うわ、桜ちゃんを守るつもりで桜ちゃんを否定しちゃったヨ」 と一瞬ボーゼンとなった ( ° 。° )。
そのあと黒板に書かれた「小牧桜はレズビアン」の文字を消しちゃうとこなんか、桜の存在そのものを消しちゃう行動に見えたヨ。 桜がレズビアンであることは決して桜と切り離せない。それは桜の尊厳に関わることだ。大好きな月乃に桜自身を否定され消されてしまう場面なんて凄いショックで声も出ないよ。しかも桜はそれを目の前で聞いて見てるんだぜ。オレの心はズタズタだよ。悲しすぎて涙も出ない。
2人乗りでの夕暮れの無言の告白(?)の場面と、鏡台の前で母親からカラコンエの花言葉を聞いて桜を守ろうと(?)決意する場面も好きだ。
LGBTに対する理解が遅々として進まないように思える。変化が実感できず、何も変わってないのではとさえ思えてしまう。
しかし、この映画を見ると7年前の2016年(公開は2018)よりは、回り(LGBTで悩んでいない者)に多少の変化・進展があったのかもしれないと思った。「わずかに」というより「かすかに」と言った方がよい変化ではある。
というのは、今もし映画と同じことが起きたとしても、回りの反応がもう少し穏やかになるのではないかと思ったからだ。
最初に級友の秘密を知った生徒も主人公も悩みはするが、もう少し軽いものになったのではと思った。1人でかかえて思いわずらわずに、友だちや花ちゃん(保健のセンセ)、母親に相談したのではないかと思う。
もし7年後の今この映画が作られたら、高校生の月乃もバス停で、「桜ちゃん、あなたが私を好きなのは嬉しいけど、それに応えることはできないゼ。あーたがレズビアンでも私たちの友情は変わらない、ずっとマブダチだぜ。友情のシルシにこのカラエンコのシュシュをあげるよ。花コトバは ”あなたを守る” さ。アタイだと思って大事にしてくんね」なんて笑顔で言えたかもしれない。
花ちゃん(保健のセンセ)の対応も、気負ってアレコレするのではなく、本人の話を聞くにとどめるみたいなことになったのではと思う。
私が7年前の映画を見て感じた「微かな」変化なんてのはこんなもんだ。
私も7年前は、LGBTという言葉を知っていたかどうかさえも怪しい
私は映画館と地上波でしか映画を見れないから、立川シネマシティさんが 「少女は卒業しない」公開記念で上映してくれて嬉しかった。
今田美桜が、いい。ナチュラルな画面がいい。ドキュメンタリータッチ...
今田美桜が、いい。ナチュラルな画面がいい。ドキュメンタリータッチ。
高校生たちが等身大。息遣いが聞こえてくる。
でも、この先生は無配慮だった。
映画のスタンスもちょっと中途半端。こんなに政治的テーマなのに。
感想
レズビアンの女の子がバスの中で1人泣くところ
今田美桜ちゃんが黒板に書かれた文字を必死で消す姿
がぶっ刺さった。
周囲に隠していた自分の本当の姿。嘘をついていた仮の姿。嘘がバレ、その嘘に対してどう感情をコントロールすればいいのかわからないという主人公。
「好き」という感情をレズビアンという状況だけで好きな子から否定される。周囲からも否定される。
自分を押し殺して生きるということの辛さ。
【”恋に性別は関係ない。”G7で唯一同性婚を認めない国、日本において2018年に今作が公開された意義は大きい。】
■数年前から、LGBTの人々に対し差別的発言(生産性がないとか・・。)をしては、謝罪し職を解かれる政治家の方々及び一部右傾化した思想を持つ方々は一向に減らない。
人間の思想は、そんなに簡単には変えられない事を、明示していると思う。
では、私は自分の娘や息子が同性愛者だと知った時に、キチンとした対応が出来るのか、と問われれば、自信がない。
但し、娘や息子の意志を尊重し、連れて来た相手に対しても礼節を持って接する事の出来る人間になりたいと思う。
今作は、とある高校2年生のクラスで、唐突に「LGBTについて」の授業が行われたが。他のクラスではその授業は行われておらず、生徒の間に「クラス内にLGBTの人がいるんじゃないか?」という疑念が生じる。
噂や動揺が広がる様は、良く分かるし、生徒たちはそれぞれ行動を起こしていく様も良く描けていると思う。
黒板に、一人の少女の名前がレズビアンだと書かれるシーンでの、それまではLGBTの人を揶揄するような言葉を発していた若き笠松将さん演じる男子高校生が”これ、ヤバいんじゃね”と言った別の男子生徒の胸倉をつかんでロッカーに叩きつけるシーンは、心に響いた。
<LGBTをテーマとした映画が、近年増えている事はご存じの通りであるが、潜在的な偏見思想を持つ人を少しでも減らすには、長い時間がかかるのだろう。
けれども、時間を掛けてでも偏見思想を無くす必要は、現代日本にとって喫緊の課題なのである。
改めて、今作を制作した方々や関係者の方々には、敬意の念を贈ります。>
笠松将演じる、場と空気を乱す絶妙な加減のトリックスター。存在そのも...
笠松将演じる、場と空気を乱す絶妙な加減のトリックスター。存在そのものがまさに不条理の権化。
最後に事の経緯が明らかになる、音声のみのエンドロール。そこで明かされる教師の身勝手なアウティング。全ては浅はかな括弧付きの「配慮」から始まっていた。
観客は時系列で先に起きた事を知ってしまっているので、純粋な恋心の独白に、この世の地獄を思い知らされることとなる。
39分という短さながら、残酷な人間の闇に静かに飲み込まれる。
胸を締め付けられるような青春映画
プライム・ビデオ鑑賞
LGBTをベースにした、少女の恋の物語。
教師がふと一石を投じたことによって、教室にに広がる波紋。
このあまりにも無教養な優しさは形を変え、魔女狩りにた疑念をもって広がり、それがじんわりと首を絞めていきます。
そもそも思春期の学生に向ける問題としては難解で、もっと本質を学んだ上で慎重に進めるべきでしょう。それでもきっと難しい事とは思いますが。
動揺や葛藤、からかう気持ちと庇う気持ち。
これらの演出にとてもリアリティがあって、皆の無垢な部分ともすごくフィットしていました。
一人の少女の二度に渡る告白と、それでも届かぬ想い。
観ていて苦しかったです。
最後にその胸の内を語るシーン、生き生きとしたその弾む声と笑顔が実に美しいのです。
誰かに向けた想いを、これだけ真っ直ぐ口にできるのが儚くも羨ましい。
物語と前後していますが、これを最後に置いてきたのも素晴らしかったです。
胸を締め付けられるような青春映画でした。
守りたかった、救われたかった
40分程度の短めながら表現、構成がすごく上手い。
若干説明チックではあるが後半が強烈
あるあるの思春期の悩みにLGBTQの話、視点がストレート側からなのも移入しやすい
全員それぞれ欠けながら相手を考えている
知らないから掛け違うわけでミスに気付くと手遅れ
まぁ死んでないんだからその日から話し合い持てば良いとは思う
「次のあるミスは失敗ではない」
あなたを守るカランコエがいいアクセントになってます
多様性が求められる現代に必要な映画
これほどまでにシンプルかつストレートにLGBT差別問題を描いた映画があっただろうか。
40分ほどで観やすく、映画の通り学校教育でも最適な作品だと思う。
そしてこんなエンドロールを効果的に使った演出はなかなか観たことがない。
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