「血は一滴も出ないが、ある意味ホラーやサスペンスより恐ろしいリアリティがある」ジュリアン ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)
血は一滴も出ないが、ある意味ホラーやサスペンスより恐ろしいリアリティがある
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レーティング「G」ではあるが、血は出なくとも見方によってはホラー以上に恐ろしい。ここで描かれた事件を法制度や社会問題からじっくり検証することも欠かせないし、世の中に埋もれている同様の悲鳴に関して、観客に多くを気づかせてくれる作品でもある。
と同時に、ヒューマンドラマ、サスペンスとしても見応えは十分だ。まさかこれほどの展開に発展していくとは誰も思わないだろう。子を守らねばという妻の気持ちも痛いほどわかるし、かといって夫の「どうにかして子供と会いたい」という気持ちもある程度は理解できる。だが夫の態度が急にぶっきらぼうになる瞬間、胸に刃を突きつけられたみたいにこちらも息が止まりそうになる。そして気づく。もっと恐ろしいのは、こんなことが以前にも起きていたであろうこと。母子はずっとこの恐怖に怯えながら、しかし法の保護を受けられずに生きてきたということだ。かくも様々な思いを喚起させる秀作である。
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