「不条理から錆び出た哀しさも悔しさも、こんな戯曲にしちゃいました!」天国でまた会おう bloodtrailさんの映画レビュー(感想・評価)
不条理から錆び出た哀しさも悔しさも、こんな戯曲にしちゃいました!
戦争を利して富を築いた父親が許せなかった男。父親を愛していた男。自分の罪を許せなかった男。それがエドゥアール。ただただ生きるために生きた男。それがアルベール。
今年の第一四半期で一番楽しみにしていたのが、これとノーザン・ソウル。で、今6月ですよ。遅すぎるよ、とぼやきたくなるけれど、とにかく見れて良かった!
フランス文学・映画の死生観が好き。ある時はあっさり死ぬ。笑いながら死ぬ。洒落たこと一つ言ったあと死ぬ。誰かの死も笑い話にしてしまう。不思議な大気を身にまとった、フランスらしい物語に、心臓を緩くサラッとつかまれる映画でした。真面目に、好きで好きでたまらない!
「戯曲」って言う言葉が、一番似合うのはフランス映画。ですよね。
顔の一部を失ったエドゥアール。そこそこリアルな描写もあるし、シリアスな心象表現もしてくれるんだが、「救いの無い暗さ」には陥らない。エレベーターの中で元恋人と無言で再会し無言で別れるアルベールは、絶望も悲愴も指輪と共にゴミ箱へ、でケセラセラ。「詐欺師」を追い詰めるブラデル。クルーゾー警部並みのおちゃらけ感。顔はマジなんですけどね。建設現場で土中に沈んで行くブラデル。小さくバイバ~イと手を振りたくなる気分。いやブラデル、あなたが手を振りなさいよ。
ホテルのスイートのテラス。詐欺師を問い詰めに来た父親は、息子と邂逅します。最終的に、共に胸の内を告げ合い抱き合う親子。直後エドゥアールは「天国で」と言い残しテラスのボーダーを飛び越えて行く。夢を見ているかの様に、眺める私たち。
犯した罪が表に出た時、自分を消し去ってしまう人がいる。どんな境遇に在ろうとも、幸せだけを求めて路を歩もうとする人がいる。内側から流れ出るものに従い生きようとしたエドゥアールと、ただ生きるために生きたアルベール。戦争がなければ、共に生きることなどなかったであろう二人の小さくて大きな冒険の終わりは、モロッコのスリーショット。歩き去る男と女と子供の後ろ姿です。ただただ生きろ、って三人の背中につぶやきたくなる、フランスの戯曲的ドラマでした。
何年か後に、もう一度見たい。って思わされる、俺的には「名画」だった.....
今日はダメだよぉ、メンズデイだけど。
リピートには早すぎるから。
ゴジラもあるから。
二日続きのリピートは禁止だから。
って我慢するのが大変....