1987、ある闘いの真実のレビュー・感想・評価
全77件中、1~20件目を表示
真実の闘い
真実が闘うための唯一の武器である人たちは、暴力や恐喝にも屈しないし、賄賂や誘惑にも靡かない。
権力や金に捉われている者たちにはそれがわからない。
ハン・ジョンウ演じる権力に屈しない検事や記者たちが中心となる前半、そしてラストの逆転には胸がすく。
キム・テリ演じる大学生とユ・ヘジン演じる叔父の看守が中心となる後半は、2人の稀有な魅力によってこの題材の映画にあってさえ微笑ましいシーンが不自然にならず、かつ緊迫感に包まれてラストへ一気に持っていかれる。
一応見せ場は作られているが民主活動家を演じたソル・ギョングがあまり活躍しなかったのは残念。
そして何より、対共所長を演じたキム・ユンソクの迫力に圧倒される。
まさに韓国映画界のオールスターキャストで、昨年公開された「ソウルの春」同様、現代史の汚点を、エンタメとして作りあげ、それが大ヒットする。韓国の映画人は観客を信じているし、観客も意識が高いのだろう。
映画に関しては実に羨ましいが、現実の世界はどうだろう。のほほんと暮らしていられる日本はいかに幸せであるということか。
余談ですが、
戦前日本で英語の教師をされ、後年日本の歴史の研究者の第一人者となられた米国人の方が、日本は権力の二重構造になっており、武力で国を治める者の上に天皇さまがいらっしゃったから、独裁者によって国が支配されることがなかった、と語ってくださったことがある。当時はあまりピンとこなかったが、この映画をはじめとして韓国、そして北朝鮮、中共、ロシアなどをみているとなるほどそういうことかと思う。演説の最中にヤジを飛ばす聴衆に対して「あの人たちには負けたくない」と言った総理もいたが、そういった政治家・権力者の上に国民にひとしく思いを寄せてくださっている天子様をいただいている私たちは何と幸せなことか。
タイムリーに再公開してくれた劇場に感謝したい。
70点ぐらい。戒厳令発令でタイムリー
先日、韓国で起きた戒厳令発令、以来デモが絶えずキナ臭いですが、そんな現状にタイムリーな内容の映画、それだけの、情報、心構え、で観ました。
どんな話か分からないし、登場人物の肩書きや関係性など理解しきれず、困惑しながら観てたけど、なんとか最後には理解できました。
これから観る方は、この映画の背景となる事件などを調べてから観た方が理解しやすいと思います。
朴鍾哲(パク・ジョンチョル)拷問致死事件という、警察が起こした事件が基であり、当時の軍事政権下における、韓国民主化闘争の話で、やはりタイムリー。
自分が韓国人だったら、最後うぉー!と燃え上がるんだろうけど、僕は日本人なので、そうならなかった(笑)
韓国ってデモばかりやってるイメージがあるけど、この映画を観ると、その気持ちが理解できます(笑)
クオリティは、さすが韓国映画、よく出来てます。
40年ほど前のお隣りの話
1987年
韓国の歴史の壮絶さ。
「タクシー運転手」もそうだけど韓国の民主化運動への弾圧は、観ていて本当に痛い。日本の私小説的な作品はメンタルがひりつく感じだけど、韓国のは肉体的にしんどい。ま、どっちもしんどいのは変わりないけど。
それにしても韓国の民主化への道は凄まじい。そして、その題材をしっかりとエンターテインしながら映像作品として時代に爪痕を残し、同時に逆戻りさせないことへの決意を感じる。
そのせいか、そんなフィルターを通して韓国の政治をウォッチすると、妙に納得してしまう。
信じられない
独裁が続いた韓国の歴史と、本作製作当時の「文化人ブラックリスト」が味わい深くする
1987年、一人の大学生の死が人々の心に火をつけた--国民の自由が許されない軍事政権下で、警察に連行された大学生が命を落とした。政府が事実をもみ消すなか、新聞社は「拷問中に死亡した」とスクープする。我慢の限界に達した人々から民主化を求める声が沸き起こり、革命へと発展。絶対的権力を相手に、悪政国家を変えようとする民衆が立ち上がった......!(Amazon Primeより)。
韓国の歴史を把握していないと理解の難しいところがあったので、鑑賞後に調べてみたところ、ざっくりいうと、韓国はこの映画のタイトルにもなっている1987年までずっと独裁政権だったみたいです。
簡単に整理すると、1945年に日本の植民地支配が解かれて以降、朝鮮戦争を経て、初代大統領が憲法を勝手に変えて独裁(12年)→一瞬民主化→軍事クーデターで再び独裁が始まる(16年間)が、韓国のCIA的な機関のトップが大統領を暗殺→一瞬民主化→またもや軍事クーデターで独裁(8年間。この大統領の時に起こったのが政府がデモを繰り返す民間人を見せしめで虐殺した光州事件。本作でも少し登場します)、という具合のようです。基本的には、長きにわたって権力が暴力で国民を押さえつけてきた歴史が横糸です。
本作は更に、物語とは別の映画製作に関わる縦糸も絡んできます。上の暗殺された大統領の娘である朴槿恵(パク・クネ)が韓国初の女性大統領に就任したのが2013年。以降、2017年に前代未聞の政治スキャンダルで罷免されるまで強い権力を保持していたわけですが、彼女が行ったのが、映画好きなら知っている方も多い「文化人ブラックリスト」の作成です。
2016年に存在が発覚したこのリストは、自らの政権に対して批判的な言動や発信を行う文化人への資金を止め、彼らを政権監視下に置く目的で整備されたものです。そして、本作の製作が開始されたのが2015年(公開は2017年)。製作を指揮したチャン監督は、本作に登場する真実に目をつぶらない人びとと同様に、まさに命がけで権力に挑んだことになります。
さて、こういった韓国の歴史的な流れと、文化人弾圧の時系列を予備知識として持って鑑賞すると味わい深くなってくる本作ですが、命さえ掌握されてしまう環境下にあって、何のつながりもない個人が、身を賭して「真実」を隠蔽せずに紡いでいった物語と言えます。死因に疑いを持つ医師、火葬許可を出さなかった検事、報道統制に屈しなかった新聞記者、連絡係を買って出た看守。だれかひとり欠けても、民主化は成し遂げられなかったことでしょう。
圧巻は、キム・ユンソク演じるパク所長。ベースは権力を恣にする暴君ですが、脱北者である彼なりの正義も描かれているおり、常軌を逸する粛清の背景になっています。いまいち分からなかったのは、キム・ジョンナムの存在。主ストーリーに絡むようで絡まないのですが、結末からすると、それなりに重要なポジションだったみたいです。これも予備知識が必要なのかも。
ストーリーが強すぎる
韓国映画の民主化運動の映画は結構見ていますが、どれもハズレ無しに完成度が高い気がする。
もちろん、映画としてカメラや表現などの編集、いつも見る名脇役の演技もさることながら、ストーリー展開が強すぎる。
それも戦後の1980年代と、比較的近い年代かつ関心の高い国で起こった運動だからだろうか。
またこの映画をきっかけにして、「あれ?日本って民主化運動って戦後あったかな?あれ?学生の運動は安保闘争しかない気がするかもー」と学生ぶりに近現代史の復習をした。学生の頃は日本近代はあまりにロマンもかけらもないなと思ってしまったが、映画をきっかけに調べることができたのはありがたい。
そして調べてみると、国内だと民主主義は自由民権運動まで遡ることになりそうで、だから日本ではあまり民主化運動というのが少し遠いのかもと感じました。逆にそこら編の映画作ったら面白そうと思いましたが、そもそもそうした映画は日本だと受けが悪そうだなと業界トップで決まって終わりそうな気もしました。
この時期に、この映画をオンライン視聴できる機会があったことに感謝。
今年141本目(合計415本目/今月(2022年5月度)18本目)。
※ 私は原則として、アマプラだのネットフリックスだのの投稿はしないことにしていますが(あふれかえってしまう)、この映画は韓国文化院が日韓交流を目的に過去の「意味のある」作品をオンライン視聴会(といっても、公開自体は4年前)したもので、6月に見に行く「スープとイデオロギー」と並んで、韓国の現代史を知る目的もあり応募したら当選しました。
また、前々から、将来は外国人問題を扱いたいと思っている行政書士合格者として、このような映画はよく見ますし応募もしています。今回もあえて書いたのはこういう事情です。
さて、映画の内容自体は非常に硬派というか、実際にあった事件をそのまま描いているものなので、あることないこと書けないし(ただし、一部に着色はある模様)、6月に始まる「スープとイデオロギー」(済州4・3事件)から、この民主化運動を勝ち取るこの事件まで、韓国は朝鮮戦争もそうだったし、内戦や紛争ばかりだったのです(ほか、「KCIA 南山の~」等もありますね)。
この映画の7年前に起きた光州事件が、この映画で参照されている1987年の事件の遠因となった事件であり、この光州事件は、上記の「スープとイデオロギー」で主に描かれる済州4・3事件と並んで韓国(済州事件のころは、韓国という概念がないので、便宜上、朝鮮半島としても良いかもしれません)のタブー視とされるものです。ただ、日本がタブー視しても最終的には真相を明らかにして公開していこうという文化があるように、韓国にも多少遅れてはいますが、やはりそのような文化があります。「スープとイデオロギー」もこの映画も、そうした中の一つの映画です(ただ、日本より「少しだけ」国のチェックが入るようです)。
そしてこの映画で流れるように、これらの暴動を元に「韓国の大統領の直接選挙制」や「言論・表現の自由」が憲法改正で盛り込まれた(日本と違い、韓国は最高法規とされる憲法も何度も改正されている)という点など、日韓の異動を知ることができて良かったです。
もっぱら、6月に行く「スープとイデオロギー」も含めて、韓国の現代史という大きなくくりで観ましたが、この事件一つという見方もできると思うし、色々な見方ができると思います。
どうも、韓国の大統領のこと(最近変わりましたよね)やコロナ事情、また、竹島問題などはさておき「文化面での交流はしっかりしたい」ということで、2021年ごろから韓国文化院(日本語サイト)が日本人向けに韓国映画(ただし、何らかの意味で観ることに意義が感じられるもの)をよくオンライン視聴(無料)でよく募集をかけてます。
大阪など在住の方はシネマート等、韓国映画に特化した映画館もありますが、そうでない方で韓国映画に興味がある方は、こうしたサイトの登録も良いのでは、と思いました(なお、シネマート自体は「おうちでシネマート」として、「ちょっと最近までやってた」程度の映画までなら普通にVODで観られます(準新作扱いで1320円、一般550円、旧作440円だったはず)。
特に減点要素とするべき点はないので、フルスコアにしました。
ユンソクの生え際
韓国は民主主義を勝ち得たのかな
映画の内容よりも、キムユンソクが所長をやっていたことを、見終わってから紹介文で知りました!すごいわ、演技って。ワンドゥギの先生だなんて、ちっとも気づきませんでした。
最も近い隣国なのに、最も遠いとはよくいったもので、おとなりさんでこんなことが起きていたなんて、少しも知りませんでした。そもそもつい最近まで、ソウルまで東京からほんの二時間くらいで行けることすら知らなかったし、歴史なんて言わずもがな。中国は大国の隣国として、歴史も古代から現代までしっかり習うのに、韓国って南北朝鮮に別れてることくらいしか頭にさなかったな。
それで、このようにして勝ち得た大統領直接選挙制や、一応の民主主義だけど、最近の報道で知る限り、歴史歪曲は度を越しているし、かつて大統領であった人は、誰一人としてまともな最期を迎えていない、この国を、こうした運動を支えた人々は、どう感じているのかな。
映画はうまいこと展開していって、全然飽きさせないし、過度に哀れみを誘うこともなく、大変興味深いものでした。
自分がのほほんとしていた大学生の時に、隣国はこんなに苛烈な時代を過...
白い靴。
拷問の取り調べで死亡した大学生を発端に民主化運動に発展した。警察官がヤクザの様です。若しくはヤクザより怖い! 私たちは平和な時代に生きているので余りピンとは来ないのですが…
韓国は容赦ない描き方がリアルで怖いです。
実際にあった出来事なので尚更。怖さを感じます。民主化運動の大学生が履いていた靴が片方抜けて無くしてしまい。その後、女の子から買って貰った白い靴。デモの時片方が抜けてしまい取りに行くことが出来なかった。政府に太刀打ち出来ない儚さを感じた。
いまの香港もそうですが民主化を進める若者が反対する政府に抑えられて首謀者が犯罪者扱いで捕まってしまいます。日本も大学生がデモしていた時代がありましたが市民が民主化を進めることは大変な事で命懸けです。
光州事件の真相
民主主義発展の裏に
韓国の民主化運動の裏に、学生運動に参加したソウル大生が取り調べ中の拷問により死亡する。
政府がもみ消す中、ある新聞社が拷問による死を報じ、民主化への大きな転換点となる。
わずか30年前に韓国であった衝撃の事実。事件を隠蔽しようとする捜査官の過激な手段に嫌悪感を感じた。
そんな不当な権力に反し、信念に従って行動した、事件に疑いを持った公安部長、犯人を知った刑務官、事実を報道した新聞社、デモに参加した学生。
彼らの行動で不正を明かす展開は熱くて良かった。
タクシー運転手で描かれた1980年の光州事件、工作 黒金星と呼ばれた男で描かれた南北の結託といい、現政権を守るためにやることがエグい。国家の悪い意味での強さが目立つ作品だった。
見事な映画だ
私は革命などというものは住民が起こすものだとは思っていない。新興ビジネスが起こすものであると思っている。今のままの体勢でいるよりも違う体制になった方が儲かるビジネスが古いビジネス体制を壊すのが革命だ。従って私の感覚から言うとこれはプロパガンダ映画ということになる。そして見事によくできたプロパガンダ映画だ。ラストの締めくくりがそういう締めくくり方になっているのでどうしても第1感想はそういうことになる。韓国はかつてこういう国だったらそして今はこういう素晴らしい国になった・・・みたいな。
だが心に残っているもの反芻してみた時、これは消して単なるプロパガンダ映画ではないことも感じられる。登場人物の視点が最初は検事、次に一般の女の子、革命分子、そして体制派の人間という風に次々にスイッチされていく。そのひとつひとつがとても良く描けていて群像劇として大成功していると思う。 描いているもののスケールが大きい話は 往々にして大雑把で人間ドラマが描けていないものになってしまうがこれは違った。 一人ひとりの人間の抱えるドラマや こだわりが小さなものであり それがリアルで 見ている者の心を動かしたと思う。それは全体カラー現れるもうひとつの印象であった。この映画は 革命とかプロパガンダではなく、腐った組織を改革しようとした人々の物語だという。
この映画は俳優たちの演技に迫力があった。日本映画じゃ無理だろう。とても羨ましいことだ。
歴史の重み
もう胸が苦しくてうまく消化できない。。
軍事政権への抵抗を扱った「タクシー運転手」にはまだ救いがありましたが、本作は終わったあとも、重たいものが胸に残り、逃げ場もない。
「ペンタゴン・ペーパーズ」より全然どっしりずっしり。
なのに決して見づらい作品ではなく、序盤はいかにも韓国映画らしいクライムサスペンスとしてミクロな視点で手際よく進んでいくのですが、それがいつしかマクロな歴史のうねりの渦中に立たされていたことに気がつく、という具合。
そして怒涛のラスト、自国の歴史への誇りをてらいなく、高らかに謳い上げるのを声もなく見せつけられる。
ここに映画に対するイノセントな信仰を感じました。
こんなことができるなら、そりゃー日本映画が逆立ちしても叶わないのは当然と思います。
韓国映画ってやっぱすごいな。
ある大学生が取り調べ中に拷問で死亡する。それを隠蔽しようとする政府と真実を報道しようとする一般市民たちの話。
.
結構政治的な内容なんだけど、これをちゃんとエンターテインメントとして楽しめるようにしてる所がやっぱり韓国映画ってすごいな。しかもそれが興行成績にも繋がるって、日本映画じゃ難しいと思うんだよね。
.
権力対一般市民っていう構造と切ない恋愛要素だったり、人間ドラマを入れたりするのって韓国ならではよね。日本じゃどうしても誰でも楽しめる簡単な話が興行成績を取りがちだからやっぱまだまだ遅れてるなって。
.
それにしても実際の写真で靴が片方脱げてたから、あーいう靴の話を持ってくるのは泣けた。これはエンドロールまでちゃんと見てほしい。
.
個人的に一番好きなシーンは検事さんがダンボール置いてくシーンですね。検事さんもっと出てきて欲しかった!.
.
全77件中、1~20件目を表示