「真実の闘い」1987、ある闘いの真実 大吉さんの映画レビュー(感想・評価)
真実の闘い
真実が闘うための唯一の武器である人たちは、暴力や恐喝にも屈しないし、賄賂や誘惑にも靡かない。
権力や金に捉われている者たちにはそれがわからない。
ハン・ジョンウ演じる権力に屈しない検事や記者たちが中心となる前半、そしてラストの逆転には胸がすく。
キム・テリ演じる大学生とユ・ヘジン演じる叔父の看守が中心となる後半は、2人の稀有な魅力によってこの題材の映画にあってさえ微笑ましいシーンが不自然にならず、かつ緊迫感に包まれてラストへ一気に持っていかれる。
一応見せ場は作られているが民主活動家を演じたソル・ギョングがあまり活躍しなかったのは残念。
そして何より、対共所長を演じたキム・ユンソクの迫力に圧倒される。
まさに韓国映画界のオールスターキャストで、昨年公開された「ソウルの春」同様、現代史の汚点を、エンタメとして作りあげ、それが大ヒットする。韓国の映画人は観客を信じているし、観客も意識が高いのだろう。
映画に関しては実に羨ましいが、現実の世界はどうだろう。のほほんと暮らしていられる日本はいかに幸せであるということか。
余談ですが、
戦前日本で英語の教師をされ、後年日本の歴史の研究者の第一人者となられた米国人の方が、日本は権力の二重構造になっており、武力で国を治める者の上に天皇さまがいらっしゃったから、独裁者によって国が支配されることがなかった、と語ってくださったことがある。当時はあまりピンとこなかったが、この映画をはじめとして韓国、そして北朝鮮、中共、ロシアなどをみているとなるほどそういうことかと思う。演説の最中にヤジを飛ばす聴衆に対して「あの人たちには負けたくない」と言った総理もいたが、そういった政治家・権力者の上に国民にひとしく思いを寄せてくださっている天子様をいただいている私たちは何と幸せなことか。
タイムリーに再公開してくれた劇場に感謝したい。