「巧妙にデザインされてたけど余り面白くは」若い女 つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
巧妙にデザインされてたけど余り面白くは
赤は、嘘つき、泣き虫、見栄っ張り、血の色でもあり、過去を引きずる色でもある。マイナス面というかネガティブな色。
ポーラが額から血を流す場面から物語は始まり、赤いポーラが自分勝手に暴れまくる前半。
青は、穏やかさ、落ち着き、調和、未来を掴もうとする色でもあり、プラス面やポジティブな色。
後半は次第に青く染まっていくポーラを見ることになる。
ポーラは左右の瞳の色が違うオッドアイだ。赤と青はどちらもポーラの中に存在しているもので、良い面も悪い面も合わせてポーラというわけだ。
そしてポーラは猫でもある。同僚のウスマンに猫の説明をした時に女と同じだと言い返されるシーンからもそれがうかがえる。
ポーラが猫なのではなくて猫がポーラなのか。まあどっちでもいい。要はポーラと猫が同一だということだ。
ここなら好きに鳴いていいと猫を墓地に連れていくが、猫は箱から出ようともしない。自分が羽ばたきたい場所はこんなところではないんだとポーラ自身が嘆いているようで面白い場面だった。
餌をもらえる飼い猫だったポーラが野良猫として生きる方法を模索するストーリーだったなと思う。新しい飼い主を探すように、最初のころ何件か知り合いの家に行ったりして野良としての自覚が足りない赤ポーラとか良くできてた。
詳しく書くとネタバレになってしまうので書けないが、こんな感じで巧妙にデザインされた脚本は確かに素晴らしかったと思う。
しかし、残念なことにそんなに面白くはない。
田舎から出てきてパリに暮らす女性の等身大系作品ってことになるだろうが、フランスでは標準の範囲内なのかもしれないけれど、どうも日本人感覚だとポーラは特殊な人に見えてしまって、つまりポーラに女性という大きな枠を捉えるだけの普遍性がなかった。
これが「全ての女性に」とか大層なものではなかったとしても、主人公ポーラに入れ込むほどの魅力は感じなかったので、やはりノリ切れない。
カンヌの新人監督賞を獲ったようで、そこはさすがに良いシーンなどそれなりにあり納得。
監督で脚本のレオノール・セライユはグレタ・ガーウィグみたいになっていくのかなと感じたりもした。
あと邦題だが、久しぶりにすごく良いと思った。
31歳は若いともいえるし若くないともいえる。相反する赤と青を内包するポーラを表すのにピッタリだし、ポーラの内面が幼かったことも表していてかなり良い。