劇場公開日 2019年4月19日

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「現代に聖人が現れたら」幸福なラザロ ローチさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0現代に聖人が現れたら

2019年9月28日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

前半、この物語は何を描こうとしているのか判然としなかったのだが、後半は一気に引き込まれた。小作農を違法に就労させていた、隔絶された村が解体され、人々は散り散りになり貧しい生活を強いられている。主人公のラザロはかつて崖から落ちて死んだはずだったが、時を経て当時の若い姿で息を吹きかえす。「復活のラザロ」そのままに蘇った彼は聖人なのか、現代にもし聖人が現れたら、我々は聖人をどう扱うのだろうか、との問いを投げかける。
聖人は社会のルールに縛られない存在だ。社会には多くの理不尽があり、不当な制度がある。そのルールに従いながら生きる現代人は、聖人を受け入れることができるのか。受け入れることができるとすれば、同じく社会からはじき出された存在であるホームレスの人々だけだった。大変巧みな構成の物語で、新たなクラシックとなり得る可能性を秘めた作品ではないかと思う。クストリッツァのアンダーグラウンドが好きな人なら必ずハマるだろう。

杉本穂高