「ラザロの復活」幸福なラザロ Raspberryさんの映画レビュー(感想・評価)
ラザロの復活
狼に育てられた双子の兄弟「ロムルスとレムス」がモデルか。ローマ神話の軍神マルスが巫女のレアを孕ませた子だ。半人半神の媒介者。ラザロは人ならざる者である。
農村の伝統がひとたび都市の文明に適応すると、人はあっという間に変貌していく。
ラザロの復活(何年経ってもラザロは変わらない)を示し、ラザロの瞳を通して幸せも与える(線路脇から食材を見つける)が、「神」の声は到底人間に届かない。
音に誘われ教会を訪れたラザロ。都市型で排他的なシスターが彼を追い払うと、パイプオルガンの響き(神)はラザロを追って教会を捨て去る。
搾取やいじめは上から下へと綿々と続く。一番下のところで全てを受け入れるラザロを、市井の人々は「働け!」と容赦なく打つ。そのおぞましい様子をロムルスとレムスの双子を育てた狼が見守り、我々をじっと見据えるのだ。
ランチのお誘いに、なけなしの金で手土産まで買って出かける人々。強者による壮大なインチキに弱者が騙される象徴のようで、私の胸はザワザワした。
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