「宗教要素が苦手な人でも割といける」幸福なラザロ AuVisさんの映画レビュー(感想・評価)
宗教要素が苦手な人でも割といける
私自身いわゆる宗教映画が苦手で、信じる者は救われるといったたぐいの話を大真面目に語る作品は避けたいクチだ。それでも本作は、死から蘇った聖人ラザロと同名の青年を主人公にしているものの、決して説教臭くはない。むしろラザロは触媒として機能し、彼の存在によって周囲の人々の本性が露わになり、あるいは変化を促される。ラザロは何も変わらない。
寓話のようだが、イタリアの人里離れた村で現実に起きた事件を題材にしたストレートな告発でもある。1980年代にもなって地主が大昔のしきたりで住民たちを搾取していたという詐欺事件。別世界の出来事のようだが、私たちにある問いを投げかけている気もする。普段常識だと思っていること、当たり前の事実として受け止めていることが、実は壮大な「嘘」だとしたら。私たちもあの村人たちのように権力者から騙されているのかも。そのことを、ラザロは私たちに気づかせようとしているのかもしれない。
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