「行け!ザンパノ号」幸福なラザロ よしたださんの映画レビュー(感想・評価)
行け!ザンパノ号
ラザロが復活してから、都市の片隅で暮らしている昔の村人が乗る三輪トラックは、フェデリコ・フェリーニの「道」でザンパノが乗っていたものとよく似ている。
(思わず、黒木華が海岸で可愛らしく「ザンパーノ!」と叫ぶシーンが甦ってしまった。)
しかも、乗っている人々の弱さも共通しており、この作品の三輪車が「道」を意識していることは明らか。
そう言えば、主人公ラザロと「道」のジェルソミーナはともに無垢である。そして、ラザロが兄弟の契りを交わすタンクレディと、ジェルソミーナをその母親から買ったザンパノは、自分本位で相手を搾取することばかり考えている。
ザンパノやタンクレディは悪人だろうか。映画はこの二人を善人としても描いてはいないが、悪人としても描いてはいない。彼らは弱くてそういう生き方以外を知らない。むしろこの二人の、無垢なゆえの傲慢が、物語の基盤となっている。
帰宅後、新聞を読み返すと、中条省平さんの日経夕刊の映画評にも「ザンパノ号」のことが言及されていた。
これほどまでに、アリーチェ・ロルバケル監督がフェリーニの「道」を意識していたのならば、この監督、非常に野心満々の映画を撮り上げたことになるではないか。
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