ブラック・クランズマンのレビュー・感想・評価
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エンタメと社会派メッセージで、リーはアメリカ人種問題と闘い続ける
ハリウッドを代表する黒人監督として人種問題や社会に切り込む力作を発表していたが、最近は精彩に欠ける凡作続いていたスパイク・リー。
白人監督が撮った人種問題映画への批判や議論を呼ぶ発言などで、すっかり日本の井○○幸のような辛口お騒がせのイメージが…。
他人の監督作にあーだこーだいちゃもん付けてないで、またかつてのようなぐうの音も出ないような力作撮ってみろ!…と思っていたら、
本当に撮った!
こりゃあ~面白かった!
スパイク・リー久々の快心作!見事な復活作!
『マルコムX』などかつての力作と並ぶ、キャリアベスト級と言っていい一作!
まず、話が面白い!
1979年。コロラドスプリングスの警察署で初の黒人刑事となったロン。
情報部配属となった彼は、電話で白人至上主義団体KKKに入会を申し込み、潜入捜査を開始する…。
…ちょっと待てよ。
ロンは黒人。顔を合わせる場にのこのこ現れたら、入会云々の問題どころではない。
そこで取った方法は…
電話対応はロンが。直接の対面は同僚のユダヤ系刑事フリップが“ロン”に成り済まして。
前代未聞の“二人一役”による潜入捜査…!
何とも大胆でユニークなアイデア。映画に打ってつけ!
…と思っていたら、何と実話!二重で驚き!
実話の驚きと映画ならではの面白さで、なるほどこれがつまらない訳がない!
黒人なのに電話口では白人っぽくまくし立て、差別発言をぶちまけるロン。
何でも、黒人っぽい喋り方と白人っぽい喋り方があって、一発で違いが分かるのだとか。
しかしこれが後々に、KKKの幹部に一泡吹かせる事になる。
フリップはまず、ロンの話し方から真似る事に。
マスターしないと一発でアウト。
さらにフリップには、もう一つ注意を払う事が。
ユダヤ系である事もバレてはならない。
黒人のみならず、KKKはユダヤ系も白人とは認めない。
実際KKKメンバーの中の過激な活動家が、フリップがユダヤ人ではないかと執拗に疑いの目を…。
潜入捜査とユダヤ人、フリップはWで危険な橋を渡る。
潜入捜査モノなので、勿論それを活かしたハラハラドキドキの見せ場も。
終盤、KKKの大物幹部を迎える。フリップはロンとして同席は当然として、ロンも上層部からの命令でその大物幹部の警護担当に。
二人が同じ場に。例の過激活動家が不審な点に気付く。
最大の危機…!
二人一役の潜入捜査は成功出来るのか…!?
黒人とユダヤ系の刑事バディ。
サスペンスもたっぷり。
当時のブラック・カルチャーや音楽や快テンポが70年代のブラック・ムービーのノリを思わせる。
そして、ユーモア。過激な差別発言や風刺もこのユーモアでくるみ、スカッとする快作に仕上げている。
以前にも『インサイド・マン』というキャリアの中では珍しいクライム・エンターテイメントを手掛けたが、本作はそれ以上のエンタメ度!
硬派な社会派作が多かったが、まさかリーがこれほどのエンターテイメントを撮れるとは…!
新しくて面白く、リーの監督作の中でも最も万人受けする作風。
二人一役のジョン・デヴィッド・ワシントンとアダム・ドライヴァー。
ワシントンは子役としてのキャリアはあるが、初の大役/初の映画主演の新人だが、堂々の演技。父親を期待させる。
“ワシントン”という姓から、父親は言うまでもなくあの黒人名優。奇しくも父親もリーの作品でブレイクし、数奇な縁を感じる。
ドライヴァーは一応助演の立ち位置だが、実際対面の潜入捜査シーンではこちらも主演と言っていいくらいの巧演と見せ場。黒いマスクで素顔を隠すより、やはりこういう作品こそ彼の本来の実力発揮。
任務遂行、KKK大物幹部をコケにし、同僚の人種差別刑事にもきっちり落とし前。
見てて、本当に痛快!
でも、単にそれだけで終わらないのが、リー。
黒人やユダヤ系への差別や偏見、
アメリカ映画初の大作で名作と言われながらも、激しい人種差別描写を肯定するかのような『國民の創生』へ一石投じ、
実在の人物であるKKK大物幹部や“アメリカ・ファースト”を声高らかに掲げる現アメリカの独裁者を痛烈批判。
そして、今尚続く人種問題を浮かび上がらせる事も忘れない。
エンターテイメントとしての面白さ、ズシンと響く社会派作品としてのメッセージ。
昔も今もアメリカを蝕む人種差別問題へのリーの怒りの声に、しびれろ!
またお騒がせ辛口屋に戻らないで、作品を通じて闘い続けて欲しい。
遠慮なしに、強烈にアメリカ社会を皮肉る作品
ブラッククランズマン 【字幕版】
鑑賞日 4/3
スターウォーズ エピソード7、8でのカイロ・レン役で有名なアダム・ドライバーが出演していることと、友達からの誘いで見にいくことに。アカデミー賞は受賞できなかったものの、ノミネートはしているのでそこそこの期待を込めて鑑賞。同年アカデミー賞作品賞のグリーンブックとかなりテーマは似ているがかなり雰囲気が違い、決してハッピーではない終わり方だった。グリーンブックは道徳的で少し都合のいいことが多かったが、今作はかなりキツめにKKKの人種差別の狂気を表現しており、それもまた良かった。またただ単に黒人を差別しているのではなく、白人の中のユダヤ人も差別の対象になってるのもまたグリーンブックとは違って物語として面白かった。KKKのメンバーが自分たちの行なっていることは絶対に「正義」であり自分たちを善人だと信じて疑わない、そんな様子が2時間に渡って描かれており、今もまだ消えることなく存在しており、「アメリカの本質は変わらない」と監督のスパイク・リーが強烈に表現していてとても印象的に心に残った。最後の実際のニュース映像で様々な事件の様子が映され、本当に心から恐怖を感じた。この作品は間違いなく反人種差別を訴えているし、良作であることは間違いないのだが、「平和になればいい」などのメッセージではなく、現アメリカ政権を痛烈に批判しており、それも「偏見」の一つであってこれでアカデミー賞は取れないのでは?と思った。
デモ隊のプラカードの様な映画
あの時代に生きる白人と黒人ならではのバディ映画かと思ったらそうでもない。初期設定だけが結局良かった。
映画に政治や時代の色を入れるのは構わないが、それが先走ってしまい肝心の物語がとても雑だった。
雑というか既視感というか、予想内というか…
トランプ政権下における“人種差別問題に対する風刺”なんだろう。「見てくれ!こんなことあってこうなって、こうなって。この国はこんなにも狂っている!」って…いや知ってるよと。人種差別による想定内の事象を見せられてるだけ。
もしメッセージというか風刺を入れたいなら、誰もが知らなかったマイノリティの気持ちとか、作者なりの差別への解釈だとか、僕らが想像もできなかった世界を観たかった。アメリカ史をあまり知らない人には良い教材にはなるかも。
あとあの“ある意味”衝撃のラストが脚本すべてを吹っ飛ばす。結局映画自体の印象残ってない。
アメリカだけの話ではない
Wake Up! 国民よ!目を覚ませ!
スパイク・リー 監督のクリエイター気質と
作家性をもって提示された強烈な社会風刺作品!
〈ユナイテッド・ステーツ〉たる
《アメリカ》の辿ってきた歴史…
独立宣言以降でいうのなら、実は意外と歴史の浅い国…
『風と共に去りぬ』、『国民の創生』
といった作品を引き合いに、ある種のカリカチュア?
誇張気味な風刺を重ねて差別する側、される側といった
問題だけを語るのではなく、その歴史の延線の
《今、現在のアメリカ》の現状を突き付けた
実写ドキュメントを最後に付け加えたところに
スパイク・リー 監督が、いや、ひとりの人間として
【人民の、人民による、人民のための “ リコール ” 】を
声高々に演説していたように見えた!聞こえた!
どうしても既観の『グリーンブック』と
公開時期も近く、同じテーマを扱っていると思って
視聴に望んだ本作『ブラック・クランズマン』
なんとも毛色の違う両作!でも、どっちも好きよ!
2019/04/15 劇場にて鑑賞
ちょっとコメディータッチの奥の深い刑事物❗
活劇としては面白いのですが...
1970年代黒人刑事がKKKを潜入捜査した実話の映画化作品。潜入捜査までの導入部が結構長くて、迂闊にも少しうつらうつらしてしまいましたが、後段はもう喜劇のような活劇でありました。こんな子供じみた仕掛けで、政治結社の錚々たる幹部が良くもまあ騙されたものだと、ちょっと滑稽な感じでした。しかしそういった政治結社は、いざとなると邪魔者の命を奪うことも厭わない暴力集団であることもまた事実で、この作品の本編ではそのリアリティが十分描き切れていなかった感もあります。制作者があの衝撃的なエンドロールをわざわざ挿入した意図は、そのコンテクストで理解した方が良いのかも知れません。私自身がそれをちゃんと消化出来たかどうかは別として... ところで、本作で改めて気付かされたのは、KKKは黒人と同じようにユダヤ人も排斥の対象にしていると言うこと。アメリカの人種問題と言うと、どうしても肌の色を思い浮かべてしまいますが、実はそれほど単純なものでも無いのですね。
スパイク・リーという作家性
KKKという昔からテレビなんかで聞いたことはあるけど、実際何やってるのかよく分からなかった秘密結社と、そこに潜入する黒人刑事のお話。
黒人差別という重いテーマを時にドシンと、時にコミカルに描いている。見ていて凄く自由だなという印象を受けた。
KKK内の小悪党たちの間抜けさとか、最高幹部との電話シーンとか、キャラクターの魅力と人間関係の面白さを存分に表現している。
ラストの派手なアクションの後、めでたしめでたしで終わるかと思いきや、まさかの現在のドキュメンタリーパート。差別は昔のことじゃなく、今も全然続いているんだぞ!と後ろから頭ガチコンと殴られた気分。賛否両論あるみたいだけど、これが作家性というやつなんだなと思う。
登場する団体の人たちとは考え方も、立場も重なるところが多く、日本を...
笑えないけど
人種差別を扱った作品は題材そのものにそろそろ飽きてきた感はあるけど、落とし所にしっくりきた。
潜入捜査の結果は成功だったのに、状況は何も変わってはいない。
燃やされる十字架も黒人学生の警察への偏見も。
差別の本質を見つめることなく、差別によって起こった事件を見ても何の意味もない。
最後にスカッとさせてくれるところは映画としてとてもよかった。
笑えないけど、滑稽だった。
グリーン・ブックでは描かれていない過激で悲惨な黒人差別
movie power
笑いもあるがいろいろ考えさせられる
今はあまり人種差別的なことはないと思っていたが最後のシーンを観てまだまだ世界は平和じゃないんだと思った。映画を観てたら昔は黒人への扱いが胸糞が悪いくらい酷いものだったんだなと考えさせられた。でも主人公は明るく生きてるのを観て笑ったりできました。
差別の種
「ゲット・アウト」の監督が関わっていると聞いて鑑賞。
実話を元にしている映画って実話故に派手さのないイメージだったのだけど、潜入捜査のハラハラ具合や主人公とヒロインの関係性、当時のファッションや、KKKの秘密結社の雰囲気など、興味深く楽しめた。
ゲット・アウトでも描かれてたけど、主人公が女性を襲っているんじゃないかと問答無用で疑われる(暴行を受ける)シーン、その展開が起こる前から「ああ、主人公は信じてもらえないんだ」と感じて、自分自身の中にある黒人へのイメージに気づかされる。
それは勿論差別ではなくて、あくまで今までの経験から学んだことから判断しているのだけど、自分の中に「そういった認識ができている」ということに驚く。
黒人とはそういうもの、という認識。
運動ができて、差別問題があって、映画ではお気楽キャラとして描かれたり……そういう自分の中にいつの間にか出来上がっていた認識。
それってふとすると差別につながるんじゃないかと思う。
白人、黒人、男、女、日本人、外国人……それぞれ、これはこんな感じといった認識がある。いつの間にかできている。
その認識の上に、私に他者に接している。
けれど気をつけなければ、目の前の人は全然当てはまらないのかもしれないのに、そんな大括りな枠に当てはめてしまう。
そんな「認識」は当たり前にできてしまうものだ。
いつだって自分のなかに思い込みや偏見という差別の種があるのでさないかと思う。
気をつけなければ、と考えることを与えてくれた作品だった。
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