「今も続く狂気」ブラック・クランズマン ノリック007さんの映画レビュー(感想・評価)
今も続く狂気
日本人は、人種差別が背景にあるので、理解するのが大変な映画です。
私も細かいところまでは、理解できていないですが、雰囲気を感じること
ができました。
日本人は、理解しなくても良い昔話ではなく、理解しなければならない、
現代に通じる話になっています。
日本や米国はもちろん、世界中で極右勢力が活発に活動しています。
題名「ブラック・クランズマン」は、黒人のクー・クラックス・クスクラン
(Ku Klux Klan:KKK)の団員という意味です。
KKKは、米国の白人至上主義の秘密結社です。
白人は、ホワイト・アングロ・サクソン・プロテスタント(WASP)です。
ホワイトは、白人です。
アングロ・サクソンは、ドイツ北岸から英国に入ってきたアングル人、
ジュート人、サクソン人というゲルマン系の人々です。
プロテスタントは、ローマカトリック教会から分離した教派、さらに
そこから分離した教派で、主にドイツ、英国、スウェーデン、フィンランド、
ノルウェー、デンマーク、アイスランド、エストニアに信者がいます。
WASPは、最初に米国に入植した人々ということになります。
WASPは、黒人だけでなく、後から米国に入植したイタリア系、アイルランド系、
ユダヤ系の白人も差別したいと言うことです。
ユダヤ系白人は、米国でもドイツ系白人に嫌われていました。
WASPは、米国の中では多くを占めていますが、減り続けています。
KKKは、南北戦争後、1865年頃のテネシー州で、白人退役軍人が「交友会」
として結成し、白三角頭巾に白マントという異様なコスプレで黒人居住区
を練り歩いては、脅かしてからかうといった嫌がらせを楽しんでいたのが
始まりと言われています。
黒人奴隷は、解放されましたが、黒人差別は合法でした。
1920年頃、KKKは盛んに活動していました。
1964年7月2日、米国で公民権法が発行されました。
黒人差別、人種差別は、違法になりました。
KKKの活動は、違法になったというわけです。
法律は、地味で、わかり難いかもしれませんが、重要です。
KKKの活動は、名前を「団体」と称し、地下に潜り、続けられていて、
最高幹部はデビッド・デュークでした。
デビッド・デュークは、1989年から1992年まで、ルイジアナ州の下院議員で、
1988年米国大統領民主党予備選と1992年米国大統領共和党予備選の候補でも
ありました。
デビッド・デュークが、米国大統領になっていたかもしれないということです。
ドナルド・トランプは、多くの世論調査を覆し、米国大統領になりました。
KKKは、トランプ米国大統領を支持しています。
昔話ではなく、現代に通じていると言うことです。
ブラックパンサーは、革命による黒人解放を提唱し、アフリカ系米国人に
対し武装蜂起を呼びかけていました。
この映画は、南北戦争を描いた「風と共に去りぬ」のシーンから始まります。
ここから、KKKが生まれたという意味です。
この映画は、1978年の米国西部にあるコロラド州コロラドスプリングスで起きた
KKKへの9ヶ月に及ぶ潜入捜査を描いています。
ロン・ストールワースは、コロラドスプリングスで初めて採用された黒人警察官
で、KKKの新聞募集広告見て、電話する刑事です。
フリップ・ジマーマンは、ロン・ストールワースに協力して、KKKに潜入捜査する
ユダヤ系の刑事です。
「國民の創生」は、1915年に公開された無声映画で、白人の視点からKKKの黒人虐待
などを壮大な叙事詩として描き、大ヒットし、米国国立フィルム登録簿に登録され、
永久に保存されている映画です。
最後に、米国の国旗が逆さまに、描かれます。
米国の国旗に関する法律には、「生命や財産に極度の危険が迫っている際、その危険
を伝える目的を除き、下方に傾けて掲揚してはならない」と規定されています。
つまり、米国に生命や財産に極度の危険が迫っていることを表しているということです。
日本の国旗には、上下はありません。
映画を理解したいという人にはパンフレットの購入をお勧めします。