「暴力vs非暴力を描く、力のこもった残念作」ピータールー マンチェスターの悲劇 Imperatorさんの映画レビュー(感想・評価)
暴力vs非暴力を描く、力のこもった残念作
2時間におよぶ長すぎる前置きの後、ようやくクライマックスが花開くかと思ったら、あっさりとエンディング。期待が大きかっただけに、残念な映画だった。
前置きの多くは、過激派が次第に排除され、法的には弾圧されるいわれのない、非暴力主義の集会であったことを強調するために費やされたが、あまりにもこの前置きは長すぎると思う。
王制打倒でも教会批判でもなく、ただ「一人一票」(ただし男のみ)を求める民衆。しかし、その描かれ方は、単に貧乏して集会しているという感じにすぎない。
一方、ふんぞりかえる国王、貧民を人間扱いしない判事など、支配者層(特権階級や資本家や法律家)の描かれ方もプロトタイプ的で、例えばナポレオン戦争後という時代背景を感じさせるものではない。
多数の人物を登場させたわりには、誰一人として満足に描かれておらず、歴史ドラマとしては深みが全くない。あたかも箇条書きされたキャラの設定書を読まされただけの印象だ。
テーマからすれば、事件後の展開も含めて、6時間くらいのTVドラマが妥当だろう。しょせん、2時間半の映画で描ける内容ではなかったのだ。
力のこもった、しかし、どこをとっても中途半端な作品と言わざるをえない。
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