「ジュディの事を事前に知る必要が」ジュディ 虹の彼方に KZKさんの映画レビュー(感想・評価)
ジュディの事を事前に知る必要が
一ツ橋ホールにて試写会鑑賞。
映画作品としてレビューをするのであれば、事前にジュディ・ガーランドという人物を知った上で鑑賞する必要があるように感じた。
恥ずかしながらアラサーの自分にとっては彼女の事を殆ど知らずに拝見した為、この作品では既に壊れてしまった彼女が終始描かれているため中々彼女の行動、言動にある程度理解はできても、その先の共感が生まれない。
所々で子役時代の苦い思い出が回想シーンとして描かれる為、ある程度は想像で彼女の苦しみを理解はできるが、それでもやはり本当の苦しみというのは理解はできていないと思う。
そのためどうしてもこの作品では壊れた彼女の行動言動が主として描かれているため、最後まで共感することはできなかった。
例えばロンドン公演でのMG、ピアニスト、ミッキーや元夫。今作で登場するジュディの周囲の人物は皆悪い人に描かれてるようには思えなかった。(あくまで作品内ではだが)
しかしジュディは既に人間不信になっているのであろう。全てを否定的に捉え彼らの存在を否定してしまう。
この辺りが終始描かれているためやはり彼女の壊れる前の事を知らないと中々彼女の気持ちを十分に理解する事はできなかった。
それでも今作内でもジュディの幸せな姿を見る事はできた。
子供達と過ごしている時はもちろんのこと、同性愛カップルのファンの自宅に行った時、最後の虹の彼方をお客さんが歌った時。彼女にとって日常的な自然な愛を周囲から与えられた時とても幸せそうな顔をしていた。
芸能界という派手な世界には僕ら一般人には理解できないほど素晴らしい生活や経験が待っているのは確かだ。
ただそれが本当の幸せなのかは人によって違うのであろう。芸能界に限らず一度スポットライトを浴びてしまうとそこから中々抜け出す事ができないことはある。
抜け出す事を時に周りは逃げたと捉え否定されるかもしれない。
ただ彼女を見てると時には逃げることも大切なんだと思った。
たった一度の人生。周囲の評価や目ももちろん大切だが時には今の環境から逃げて自分を客観的に見ることも大切なのであろう。
しかし彼女の場合、歌う事を、自分の歌でお客さんを笑顔にする事が幸せだったから中々環境を変えられなかったのであろう。
ジュディ・ガーランドという人生のほんの一部を体験できてとても良かった。