劇場公開日 2019年7月5日

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「新たな西部劇の傑作誕生」ゴールデン・リバー つとみさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5新たな西部劇の傑作誕生

2023年11月22日
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鑑賞方法:映画館

西部劇はヤンチャなアウトローどもが「ヒャッハー!」する映画だ。良くも悪くも刹那的でマッチョ。
今作「ゴールデン・リバー」なんか、オープニングからしてそのカテゴリーだと信じて疑わなかった。「提督の使いで来た!シスターズ兄弟だ!」って、シスターなのかブラザーなのか?とんだおとぼけ野郎共だぜ!ってな具合である。

反省しよう。
この映画はそんな脳筋ウェスタンなんかじゃなかったのである。
断言しよう。
この映画は西部劇の新たな可能性を開くものである。

とにかく、主演のジョン・C・ライリーが素晴らしい。大袈裟なことなど何もないのに、イーライ(シスターズ兄)の個性を見事に演じきっている。
イーライの優しさ、賢さ、強さ、間抜けさ、望み、後悔。全てのシーンがイーライとはどんな人物か?私たちに雄弁に語ってくれる。

特に愛するものへのあふれる優しさがたまらない。もう、イーライを観ているだけで満足。オッサンなのにカワイイ。

ストーリーも緻密で、前半の何気ないチャーリー(シスターズ弟)とのシーンが後半に活きて来るのだが、イーライがとった行動が前半とは違うのに、その意味するところが同じ、という驚異の演出。

このチャーリーを演じているのがホアキン・フェニックスなんだが、彼がまた冒頭書いたような、西部劇には欠かせないヒャッハー系。
むしろこの映画の西部劇要素を一人で担っていると言っても過言じゃない。

この二人だけでもお腹いっぱいなほど映画にグイグイ惹きこんでくるのに、偵察係のモリスをジェイク・ギレンホール、二人の標的・化学者をリズ・アーメッドがそれぞれ魅力いっぱいに演じている。

どの人物が画面に写っていても、静かに濃密に彼らの人物像が滲み出してくる。
それでいて西部劇らしいサスペンスにあふれ、ワイルドさと精密さがほどよくミックスされた完璧な作品だ。

エンディングの後、「明日に向かって撃て!」を思い出した。内容は全然違うのに、全く同じ印象を受けた。どの辺りが重なったのか、実を言うとよくわからないのだが、夫と二人、ほぼ同時に「明日に向かって撃て!」みたいだったよね、と口にして思わず笑った。

正直に告白すると、私は西部劇が苦手である。でも、「ゴールデン・リバー」はイイ!
こんなアウトローなら、いつまででも観ていたい。

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つとみ