劇場公開日 2019年1月25日

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「なぜ、次から次へと人がいなくなるのか」サスペリア とえさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5なぜ、次から次へと人がいなくなるのか

2019年2月16日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

なかなかグロくてクレイジーな映画だったけど面白かった

1977年のベルリン
アメリカ人のスージーはかねてから憧れの舞踏団に入団する
しかし、そこでは、日々奇妙なことが起きていて…

初めのうちは「これは何が言いたいんだろう…」と思いながら、訳がわからないままに観ていた

そのうち、ちょいちょい間に入ってくる「赤軍のハイジャック」のニュースを観て
これは「異なるものを排除しようとする悪について」の物語なんだなと思うようになった

1977年当時のベルリンは冷戦の真っ只中で、舞踏団のビルの前には「ベルリンの壁」が立ちはだかっていた

その当時は、西側諸国で政府に反対して共産主義を支持する者はアカだとして排除されていた

この映画でも、クロエ・グレース・モレッツ演じるパトリシアは、活動家をしているという話が出てくる

パトリシアは、体制に疑問を持つタイプの人で「舞踏団に操られている」と感じ、博士に訴えていたが、その後、忽然と姿を消してしまう

つまり、国も舞踏団も幹部の意見が絶対で、そこに疑問を持って発言する者は有無を言わせず消されてしまう
(ハイジャック事件の結果がそれを表している)

悪魔がそんな体制に反対する者を排除する様子をホラー仕立てで描いたのが、この映画なのだ

ナチスドイツによるユダヤ人虐殺も、その悪魔による仕業の一つである

ここぞという時の衣装が全て赤で統一されていたのは
そんな人間の血生臭さを表したかったのかなと思った

そして現代
ドイツの壁はなくなったが、ヨーロッパでは移民排斥問題が起き
アメリカにはメキシコとの国境に壁が立つ

それもまた悪魔の仕業では…
と感じる作品になっている
(ということは、トランプは悪魔なのか)

そのことを描くのに、こんなに複雑にする必要があったかな…とか
いろいろ突っ込みたいことはあるんだけど
ルカ・グァダニーノ監督は、
きっと「君の名前で僕を呼んで」とは真逆の作品を作って自由になりたかったんじゃないかなと思った

そういう意味では、これは自由に言いたいことを言って、描きたいことを描いて作った作品なんだろうなと思った

とえ