「怪物を生んで救われた少女」メアリーの総て とえさんの映画レビュー(感想・評価)
怪物を生んで救われた少女
どっぷりとメアリーの世界に浸って見入ってしまった
言葉に囲まれて育った少女が、孤独と絶望の淵に立った時、自ら生み出した言葉に救われていく
彼女の人生から伝わってくる切なさと、静かな感動に包まれた作品
この作品は、18歳で「フランケンシュタイン」を執筆したメアリー・シェリーの実話を描いた作品
若くて奔放で、妻子持ちの詩人パーシー・シェリーと恋に落ちたメアリー
しかし、メアリーの父も妻が二人いたことから、恋愛は自由なものだと信じてメアリーはパーシーと駆け落ち
しかし、そこから彼女に様々な悲劇が押し寄せる
「フランケンシュタイン」と言えば、フランケンシュタイン博士が作った怪物
怪物は博士の愛情を求めるけれど、怪物を作ってしまった博士は、その思いを拒絶
そこから、怪物は孤独と絶望の中を生きることになる
この映画を観て思ったのは、
そんなフランケンシュタインは、メアリーの内面を形にしているということ
その「フランケンシュタイン」を執筆した当時のメアリーは、母を知らないために親の愛情を受けられず、恋人のパーシーからも見捨てられ、孤独と絶望の中を生きていた
その中で「死んだカエルを生き返らせる」というマジシャンの演目に心を奪われ、怪奇小説「フランケンシュタイン」が誕生する
18歳という若さで、メアリーは絶望を感じる孤独の中にいた
もう、それだけで、この物語は悲しくて切ない
それも、全てパーシーという遊び人と出会ったことが運の尽きだけれど
でも、もしも彼女が、パーシーと出会っていなかったら、私たちはフランケンシュタインを知ることがなかったのだから、それはとても皮肉なことだし、それが彼女の運命だったと思ってしまう
しかし、そんな彼女の絶望も、彼女の心の中にある言葉がフランケンシュタインという怪物を生み出すことで救われていく
画家は絵を描き、歌手は歌うことで自らの人生を救うように
作家は、自らの言葉で自分自身を救うんだなと思った
そう思うと、
メアリーが作家の家に生まれたのも、母は彼女を産んで亡くなったのも、詩人と恋に落ちたのも、そこから様々な悲劇に見舞われるのも
その全てが、彼女に定められた運命だったのだろう
フランケンシュタイン博士が生んだ怪物に、彼女の全人生が込められているからこそ、出版から180年以上経った今も、多くの人に愛される作品なんだと思う