劇場公開日 2021年3月26日

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「会社に尽くすな会社を利用しろ」騙し絵の牙 フリントさんの映画レビュー(感想・評価)

会社に尽くすな会社を利用しろ

2021年4月2日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

とある出版社のお家騒動の話

豪華キャストの騙し合いバトル的な予告編を見た時からこの映画にはいい感情が沸かなかった。
ラスト何分の衝撃とか、あなたは絶対に騙される、驚愕のラストとか予告編で言われると、身構えてしまうのは私だけではないはず。
余計な事を言わなければすんなり驚けたし騙されたのに・・・
天邪鬼な感じで絶対騙されないようにしようと気を張りつつ鑑賞。

冒頭から意味深な感じでスタートするのだが、なんだろう純粋に見てられない、何かノイズを感じる。
予告編を見たからか、この映画にいい感情が沸かないからか、映る物全部がウザい、演技、背景、カットなどが気に入らない感じがする。
やばい、変なスイッチ入っちゃったかな~なんて不安になっていたのだが、自然とそんな負の感情はほぐれていった。
役者の安定感とストーリーのテンポのよさにどっぷり物語に浸かってしまった。

騙し合いも出版業界の裏側もお家騒動も雑誌存続も消えた作家も全部の要素が面白い。
騙し絵は一つ一つのパーツは独立しれるけれど全体でみると一つの作品になってる。まさにタイトルがストーリーを物語っている。
自分は騙されなかったけど裏切られました、いい意味で。

大泉洋は昼行燈役が似合いますよね。
ひょうひょうとしていながらちょっと隙があったり、憎めない。
得体のしれない新編集長役良かったです。

松岡茉優も真面目で熱い担当編集としていい味出してました。
大物作家に瞬きしないでダメだしするところとか、目がもう怖かったですね。
ワイン飲みすぎて酔っぱらう演技とか、本当にグデングデンな感じ出ててまいしたね。

國村隼、佐藤浩市、リリー・フランキーなどを贅沢に脇役で使っていて作品全体がガッチリとまとまっていたし安定感がすごかった。
脇役の中で一番光ってたのは池田エライザですね、美人モデルともう一つ顔、いいキャラクターでしたし、しっかり演じ切ってたと思います。

佐野史郎が出てる映画を最近ちょくちょく見てるんですが、とってもいい役者さんですよね、
安心できる優しい役もできるし、卑怯な小物にも巨悪な権力者にもなれる。
佐野さんを見てると図らずもワクワクしている自分がいます。これからも注目していきたいです。

あと塚本信也監督ですね、なんでこの人はこうも優しさがにじみ出てくるのだろう。
撮ってる作品は結構硬派だしハードだし、どちらかと言うと強面だと思うのだが、優しいんですよねセリフも表情も動きも。癒されます。

そう言えば森優作は「野火」で塚本監督と仕事してますよね、森さんも最近いい映画出てるの見かけるし人気上昇中ですね。
そんな二人が同じ映画に出てるなんていいめぐり合わせです。

個人的にこの映画での一番グッと来たシーンは
大泉洋がコーヒーカップを投げ捨てるところです。

一杯食わされた感、くやしさ、最高によかった。
あんまり見れない大泉さんのシーンな気がします。

伏線も持てあますことなく納得できる回収でしたし、どんでん返しも気持ちよく、予告編での不快感をはねのけるほどの面白い映画でした。

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劇中セリフより

「日本で勝負しちゃだめですか」

世界は広い、そして可能性がひしめき合っている。
日本は狭い、そして可能性がひしめき合っている。

日本一になったらつぎに世界一を狙うのが手順だと思ってたけど、どうもそういう時代じゃないようですね。
世界一になってから日本一を目指してもいい。むしろ世界一より苦戦するかも知れません。

フリント