「騙し合いバトルかどうかは人それぞれですが、テンポが良く小気味良い良作です。」騙し絵の牙 松王○さんの映画レビュー(感想・評価)
騙し合いバトルかどうかは人それぞれですが、テンポが良く小気味良い良作です。
本来であれば去年の6月に公開されていた筈ですが、コロナ禍の影響で約9ヶ月の延期。まだコロナ禍の影響が予断を許さない状況ですがやっと公開。
この作品の予告編を上映前予告で何度観たか分かんないぐらいw
とりあえず以前から興味があったので鑑賞しました。
で、感想はと言うと、面白い!
テンポが良くて、いろんな問題や仕掛けがサクサクと出てくるので観ていて飽きさせない。
主演の大泉洋さんを始め、豪華キャストで物語がどっしりしっかり感が満載で邦画の面白さが詰まったエンタメ作品です。
ただ、最初に難点を言うとすると…予告編で散々煽られた「騙し合いバトル」と言う程騙し合いはしてないw
大泉洋さん演じる速水があの手この手でスカしたり戦略を張り巡らしたりしているだけで騙し合いと言う程ではない。
他のキャラにしてもそう。一筋縄でいかない癖のある連中なので「あ~言えばこ~言う」と言うか、狡猾かつ巧妙なだけで、騙していると言う感じではないんですよね。
ラストで松岡茉優さん演じる高野が速水を出し抜くのも騙している訳ではなくて、単に高野のアイデアが速水より秀逸だったと言うだけ。
この辺りが過剰に煽っている分、観ると肩透かしされた感があって、ちょっとなんだかなぁ~と思ったしますが如何でしょうか?
また、宮沢氷魚さん演じる矢尻聖が小説家なのかタレントなのかがよく分からん。
新人の小説家でイケメンだと思うんですが、過剰にイケメン振りを煽られているし振る舞いもタレントっぽい。
薫風社に訪れた時も女性社員が色めきだった騒ぎは今話題のイケメン俳優が訪ねてきた!ぐらいでないとああはならないとおもうんですよね。
また、池田エライザさん演じる城島咲が逮捕された際のコメントもタレント扱いに近い。
実はゴーストライターがいて、単に売れてない廃業を決めていた俳優でしたと言うのはちょっと無理がありません?と思うんですよね。
この辺りが巧妙に組まれていた割りには浅いと言うか、雑い。
惜しいなぁ~と個人的には思います。
大手出版社の社長が急死した事で新しい社長が就任するが改革として雑誌廃刊の余儀なくされる所に就任した新編集長の速水と歴史ある文芸誌から配属された高野があの手この手で雑誌「TRINITY」を盛り上げようとする。
だが、社内での権力争いや策略・陰謀が張り巡らされるがTRINITYは様々な戦略でトラブルも逆手にとって売り上げを伸ばしていく。また裏では名門文芸雑誌の復活と社内権力争いが暗躍していた…
と言うのがざっくりなあらすじ。
キャストは大泉洋さん、松岡茉優さん、宮沢氷魚さん、池田エライザさん、斎藤工さん、中村倫也さん、佐野史郎さん、リリー・フランキーさん、塚本晋也さん、國村隼さん、木村佳乃さん、小林聡美さん、佐藤浩市さんと超豪華メンバー。
大泉洋さんの速水は大泉さんをイメージして当て書きされただけあって、もうぴったり過ぎ♪
劇中の最後に高野にしてやられた際に屋上で憤慨からコーヒーカップを叩きつける様は今まで何処か痛快に映りますw
クールで策略を十重二十重に張り巡らせているルパン三世の様ですがw、まさかの元部下にしてやられる様は何処か人間臭さがあって割りと好きなんですよね♪
松岡茉優さんの高野も新人社員らしいポカをしたりしますが、松岡茉優さんってスカすか、感情の高ぶりの時の演技が絶妙なんですよね。
二階堂の接待でのワインで酔っぱらうのとか、矢尻の招待がバレた時の「お前誰だよ!」は絶品w
大御所小説家の二階堂役の國村隼さんも良い味出しているんですよね♪
原作の塩田武士さんは昨年公開された「罪の声」の原作者でもありますが、前作でも重厚かつテンポの良い流れが好きでしたが今業界的にも一番「気になる」小説家なんではないでしょうか?
個人的には実のお姉さんの塩田えみさんとお仕事をしてた事があるので、それも含めて気になります♪
監督の吉田大八さんは映画「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」や「パーマネント野ばら」「桐島、部活やめるってよ」「紙の月」等の「なんか気になる」作品を幾つ手掛けられていてます。
脚本の楠野一郎さんは「ケンとメリー 雨あがりの夜空に」「天空の蜂」「東京喰種トーキョーグール」なんかを担当されていますが、個人的に気になるのはカルト映画としてちょいと話題になった「ゴーストマスター」の脚本を担当されていたのはビックリ。…今までの毛色と全然ちゃうやん!w
雑誌が売れないと言うのは、以前から言われていた事ですが、紙媒体には紙媒体の良さがあると思ってます。
ですが、それでも費用を回収出来なくて、コスト削減で廃刊していく雑誌が多い中、「聖域」の様に守られている文芸誌は口も手も出す事は御法度な感じはそれなりに分かるだけに面白いし、小難しくないのも良い。
ただ、最初にも書きましたが騙し合いと言う程でも無いし、ラストもめちゃくちゃ意外か?と言われるとそうでもない。
「あ~そう来たか~」ぐらいかなぁと思うのと、薫風社の一大事業「プロジェクトKIBA」のタイトルっていろんな意味合いが含まれているんですが、ちょっとダサいかな?と思うのとw、エンタメ・カルチャー雑誌としてはちょっと秘策のパンチが弱いかな。
やっぱり文芸頼りじゃん!的なのが多いので、それなら劇中で出演された「義足モデル」の折茂昌美さんにもう少しスポットを当てた方が良かったのでないかな?と思いますが如何でしょうかw
それでも観る価値は十分にあると思う作品なので、是非是非です♪