劇場公開日 2021年3月26日

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「【「トリニティ」という罠】」騙し絵の牙 ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5【「トリニティ」という罠】

2021年3月29日
iPhoneアプリから投稿

僕の姪が、トリニティという名前の、とあるスポーツのアマチュアクラブチームに入っていて、僕の妹に、なんでトリニティって名前なんだよと尋ねたら、子供・親・コーチでチームを作り上げてるってことだと解説されたことがあった。
まあ、キリスト教の三位一体(トリニティ)にかけて、よくも、そんな大層な名前にしたもんだと笑ったことがあった。

ただ、この3つでひとつのセットという思考は、人にとって心地よく聞こえるのは昔から言われていて、プレゼンなんかでも、序論、本論、結論の構成や、各項目に強みや問題点、メリット等を3つずつで展開させるとか、3つの集合からなるキャップを見せると、人はなるほどと思い込みやすいとか、分かりやすいとか、ある意味、魔法の数字のような扱いをされることが多い気がする。

(以下、ちょいネタバレ)

KIBAもそうだ、K・言葉、I・イメージ、BA・場。
もともと別のことなのに、強引に3つにすると、ちょっと受けが良いのだ。

この作品は、苦境に立たされている老舗の出版社と、伝統はあるもの不採算な部門、金食い虫の作家、下世話な情報雑誌、内部抗争、出版不況を題材に、さもありなんというストーリーが展開するが、謎の作家や、人気モデルの事件がスパイスとなって、話は二転三転する。

しかし、所々で登場する3つの事柄によって、観る側は、この出版社も、なんかまともなビジネスの方向性を探ってるんじゃないかみたいな気にさせられる。

上述の、KIBAもそうだが、薫風社・トリニティ・アマゾンのコンビネーションも、そもそも薫風社とトリニティは一体のはずなのに、中には、ほうほうと、何か新しいビジネスモデルのように思う人はいるに違いない。

だが、映画は、妙に説得感のある3つのキーワードから構成される(本当は稚拙な)ビジネスモデルよりも、出版業は、面白いものを作れば売れるんだという原点に辿り着くことになる。

この映画は、実は、ここがポイントなのだ。

僕個人としては、お笑い芸人さんやタレントさんが作家になりましたみたいのは、食傷気味というか、全然興味はない。
また、映画の最後に、出版業と街の本屋を兼業する書店が登場してが、同様な本屋が廃業したのを見たことがあって、紙の本業界が本当に逆風であることも理解したうえで、出版社には、脳みそが揺さぶられるような新進気鋭の作家を発掘してほしいとなと思ったりもする。
SFなんかで哲学的な問いかけのあるような小説を書く良い日本人作家さんはいないものかと考えたりもする。

それに、最近の芥川賞はハードル下げすぎだと思う。
四つの作品が映画化された佐藤泰志さんは賞に恵まれなかったが、当時の芥川賞審査員は、ちょーーーー厳しい面々(大江健三郎さんとか)で、今は、結構甘々だと聞いたことがある。
映画にも芥川賞云々の場面はあるが、もし、あんなことがまかり通っていたら…。
まあ良い。

ところで、3つキーワードの罠について、最近で云うと、菅の「自助、共助、公助」はそうだし、安倍の三本の矢も然り。
安倍の3本目の矢は、放たれたのかは分からないが、きっと、これらは、どこぞの広告代理店が、絶対入れ知恵したキャッチフレーズに違いない。
国民を騙そうとしているのか、はぐらかしたいのか、とにかくツッコミどころ満載な気がする。

まあ、映画はやむを得ないとしても、バカな政治家連中には騙されないようにしましょう。

ワンコ