「日本映画としてはよく出来た方だしストーリーはしっかりしていたと思う...」騙し絵の牙 panpan00さんの映画レビュー(感想・評価)
日本映画としてはよく出来た方だしストーリーはしっかりしていたと思う...
日本映画としてはよく出来た方だしストーリーはしっかりしていたと思う。
ただ、場を盛り上げるために邪魔な音楽が入ったのが気になった。ドラマの延長みたいな作りではなく、違う手法で盛り上がりを見せて欲しかった。
映画をざっくり言うと、大泉洋が演じる主役の速水がやり手で全てが彼の掌の上で転がっていたんだけど、最後に部下の高野恵(松岡茉優)に一杯食わされるってオチ。
出演者はちゃんとした役者だったので、変な感じにはなっていない。
薫風社は出版社なんだけど、デジタル化の波もあって景気は良くなさそうだ。従業員のデスクの上には書類が積まれていて、今だに昭和的な働き方をしている業界のようだ。紙と鉛筆の世界がAmazonのようなデジタル世界に飲み込まれ消滅するのも時間の問題のように見える。映画の中でも、高野恵の実家は本屋を営んでいたが閉店に追い込まれていた。
創業者の絶対的カリスマの伊庭喜之助が逝去すると、社内は二分する。1つは薫風社が100年以上も出版を続けてきた「小説薫風」を重んじる派閥と、「小説薫風」が儲からないと判断し新しいものを生み出したいと考えている派閥だ。
前者は佐野四郎演じる宮藤が中心で、後者は機関車トーマツと言われる佐藤浩市が演じる東松が中心だ。主役の速水は薫風社の新雑誌TRINITYの編集者で東松の協力者だ。速水の計画通り東松は社長になり、また宮藤は常務の席を離れた。
速水は相当なやり手。過去に様々な雑誌の編集経験があるので、色んな所とのパイプもあるしその分野の知識も持っている。彼の掌の上で計画通りに話は進んでいく。
速水は高野恵が落とした新人作家八代の原稿を拾うと、それが消えた大作家神座の物だと悟ってしまう。高野恵はそんなことには気付いていない。また、タレントの城島咲がかつてジョージ真崎のペンネームで小説や絵を書いていたことも見抜いてしまう。ハッキリ言って、読書が好きのレベルを超えている。速水の小説に対する知識は神レベルだ。
速水はTRINITYを売るためにいくつかの仕掛けを取り入れる。まず、イケメン作家八代と城島咲の小説をTRINITYに掲載することを企てる。それだけではバズらないので二人を交際しているとして週刊誌に掲載する。これで話題性は間違いがないので、TRINITYは売れそうだが、加えて二階堂大作を上手く丸め込ませ、二階堂原作の漫画も掲載する。
TRINITYの売れ行きは良さそうだ。
全て速水は計画通り。この後、城島咲は交際発覚を真に受けたストーカーに襲われ、なんとそれを3dプリンターで作った銃で応戦し、銃刀法違反で逮捕されてしまう。
イケメン八代はモデルみたいにチヤホヤされ、それに不満を募らせた。
実はこれも速水の策。
TRINITYで速水の部下、柴崎(坪倉)は元々速水のやり方が気に入らなかったので、裏で八代と小説薫風を仲介し八代は小説薫風に小説を掲載する事になった。
東松が社長になってから月刊だった小説薫風が季刊になって、苦虫を味わった宮藤は八代の小説を小説薫風に掲載すると会見する。その場に同席していた八代は実は小説は自作ではなく友人の書いたものを盗んだと記者に告白する。
全て速水の策だ。
速水はこのために役者志望だった八代に声を掛けて一芝居打ったのだ。
高野恵は激昴するが、そこに神座がやって来て、事の顛末を話す。
高野恵は元々「小説薫風」の編集だったが、二階堂大作のセレモニーの場で失礼な物言いをしたことから、「小説薫風」の編集から外されてしまう。高野恵が実家で燻っていると速水がやって来てTRINITYを手伝わないかと誘ったのが経緯。高野恵はその誘いに乗ると、これまでお世話になった「小説薫風」編集長の江波(木村佳乃)と疎遠となった。
「小説薫風」は休刊し、東松の計画通りにKIBA建設を進めようとしていた。KIBAはよく分からないけど、物流センター?みたいな、要するに薫風社が持ってる土地建物が利益を生むように有効活用しようと言う話。
東松の部屋に速水がやってきた。社長退陣の話をするわけだ。何を言ってるか分からない東松の前に伊庭の息子、伊庭惟高がやって来て東松は全てを悟ったようだ。
速水の計画通りに薫風社はAmazonと提携することになる。出版をやめてAmazon上に記事を掲載するような話だったと思う。薫風社の役割は才能ある作家を見つけることに重点を置くようになる。
TRINITYで速水の下で働いていた部下達は速水に利用されたことや将来性に不安を感じている。速水は言う、利用すればいいと。
速水と高野恵は薫風社の屋上で会話している。私を誘った時、実家の住所を知ってたのではなくてたまたまですよね。速水は偶然良い感じの本屋があると思って入店したら高野恵がいたと答える。
12月23日に高野恵は薫風社を退社する。7ヶ月後、元上司の江波と共に営業する実家の本屋に大行列が出来ている。神座の22年振りの新作を自身の店のみで販売するわけだ。定価35000円と高額だが、売れ行きは良さそうだ。
前にお店に来た女子高校生に、神座の本はえいがかやドラマ化されていないから読むしかない、と言われたことがヒントになったようだ。この店でしか買えないというプレミアムが行列を作り大成功した。
速水はこの話を聞くとコーヒーを、床に叩きつけた。速水の計算外だったからだ。
とは言え速水は次の一手のため、城島咲が投獄されている刑務所に行くと、彼女に小説を書けとアドバイスする。