「「止められるか、俺たちを」という科白を聞いたのは誰か」止められるか、俺たちを マユキさんの映画レビュー(感想・評価)
「止められるか、俺たちを」という科白を聞いたのは誰か
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若松孝二でも足立正生でもなく、謎の死を遂げた吉積めぐみを中心にしたことで、「映画に命を賭けた男たちの群像劇」とは違う深さが加わった。エネルギーの塊のような若松孝二、観念世界を構築する足立正夫。対して、作りたいものがわからない吉積めぐみ。悩みを打ち明けた彼女に、秋山道男(オバケ)は「目の前の課題をこなすだけだ」と答える。しかし、吉積はそれだけでは生きられなかった。
子どもを身籠ったことと、自分の方向性のジレンマに陥った吉積。ここに男性性とは異なった女性性の問題が立ち現われる。また、彼女は政治に興味が持てない、と言う。しかし、その「政治」とは、男たちが語る大文字の「政治」のことだったのではないか。実生活とはどこか遊離した「政治」の議論に違和感を感じていたのではないだろうか。
若松は「男に生まれた以上、女は拝むものだ」と語っていた。「止められるか、俺たちを」とは、若松や足立たちを含む映画に賭けた男たちからの、吉積への問いであり愛だったのではないか。
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