劇場公開日 2018年8月24日

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「タマゴ>透明人間>カニ」ちいさな英雄 カニとタマゴと透明人間 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0タマゴ>透明人間>カニ

2019年3月26日
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鑑賞方法:DVD/BD

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♪ポノック~ ポノック~ ポノックの短編劇場~
…というOPの歌の歌詞通り、
『メアリと魔女の花』に続く、スタジオポノックの劇場アニメ第2弾で、“ポノック短編劇場”プロジェクト第1弾。
長編ではなく、短編オムニバスというのがユニーク。
テーマは、“ちいさな英雄”。

第1話は、スタジオポノックの雄、米林宏昌監督初のオリジナル・ストーリー『カニーニとカニーノ』。
大魚に襲われ、行方不明になったトト(父親)を探す為、川底を冒険するカニの兄弟のファンタジー。

第2話は、『ギブリーズ episode2』の百瀬義行監督による『サムライエッグ』。
実話をベースに描く、極度の卵アレルギーの息子と母の物語。

第3話は、宮崎作品で腕を奮ったアニメーター、山下明彦監督による『透明人間』。
透明人間の男の孤独な日常。

おそらく目玉は米林監督の作品なのだろうが、個人的に一番良かったのは、『サムライエッグ』。
短編アニメとは言え、卵アレルギーを抱える息子と母親の苦悩が充分伝わってきたし、母子の絆、アレルギーに負けない!…という前向きな姿をなかなか感動的に、ハートフルに。
温もりある画のタッチも良かった。
どうせなら、長編で見たかった。

『透明人間』も悪くなかった。
オムニバス・アニメのあるあるで、必ず一本は異色作があり、本作がその類い。
演出や音楽も独特。
何か重石を身に付けていないとふわふわ宙に浮いてしまう透明人間の設定もさることながら、存在してるのに周りから“見えない”彼は、この社会に於いて、孤独で、無視され、存在感の無い肩身の狭い者の代弁。
そんな彼が、ある勇気を振り絞る…!

この2作は“ちいさな英雄”というテーマにも沿っていたが、
ビミョーだったのは、事もあろうに米林監督の作品…。
カニを人間化したファンタジーというのはいいとして、致命的なのは、話の面白味が…。
短編アニメとは言え、やりようによってはワクワクハラハラの冒険も出来るのに、ワクワクもハラハラも面白味も盛り上がらず…。
平淡な冒険の末、トトと再会。が、あわや大魚に喰われる!
“上には上が居る”という、よくあるオチ。
マロ(米林監督)は長編の方がいいかも…。

2作品に救われ、総じて思ってたより良かった。
スタジオポノックは今後もこの“短編劇場”を製作していくようで、ひょっとしたらいずれ、
長編で傑作を放つ監督や、アカデミー短編アニメ映画賞にノミネートされるような秀作も産まれるかもしれない。
第2弾も見てみたい。

近大