「ギュギュっと詰め込み面白かった」影踏み つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
ギュギュっと詰め込み面白かった
ストーリーの流れに沿って解説じみたレビューを書こうかと考えていたが、とても文字制限内に収まりそうもなかったのでやめた。
それだけ上手く時短して約二時間の枠に収めた作品だったと思う。
修一が乗り越えなければならないことは、弟、母、自分、そして久子だ。それらを事件の捜査に乗せてほどいていく。
一番分かりやすいのがスタンガンを持った誠との場面で、その状況で久子は全く関係ないのに誠のセリフで久子のことが頭をよぎるはずだ。
そんな感じで事件の究明と修一の変化を同時にこなすのは本当に上手くやったと褒めるしかない。
終盤、修一は久能に対して自己弁護にもなるセリフを吐く。そうすることでやっと自分が20年つまずき続けていたものに気付き、エンディングに向かう。
母のことも弟のこともしこりのようにしてしまっていたのは結局自分なのだ。
過去を乗り越え歩み出す感じは、鶴見辰吾演じる馬渕との会話にも表れる。「あの時は正義だと思ったよ」と、過去形だった。
そして20年止まったままだった時が動きだし、ラストシーンになる。
だいぶ遅れてきた青春。そう青春映画だったね。
不満点としては、まず、多くの方がレビューに書かれているように、何故に主演が山崎まさよし?だ。
滅茶苦茶演技が下手だとは思わないけれど、特に上手いわけでもなく、作中で歌うのかなとも思ったが、歌わず(エンディングは歌ったけど)よく分からない。
山崎まさよし主演で集客が見込めるとも思えないんだけど、そんなことないのか?
まあ、くたびれた感じの役のイメージには合っていたとも思うのでそのせいかな。
次の不満は、時短の影響をモロに受けて、久子の掘り下げが足りなかったどころかほとんどなく、よく分からない謎女になっていたことだ。
半端な描写をせず、むしろいさぎよい気もするし、物語の中心である修一と少しズレる部分なので、どうでもいいと言えばどうでもよかったが。
あとこれは不満ではないけれど、映画でしか知らない横山秀夫ではあるが、自分が考える横山秀夫作品とちょっと違うなと感じた。
本作が軟派だとは言わないが、もっと硬派なイメージの作家さんだったから。
ネタバレを避けるためにところどころ曖昧な書き方になった。意味がわからなかったらごめんなさいね。
