「良くも悪くも昔のまんま」劇場版シティーハンター 新宿プライベート・アイズ アラカンさんの映画レビュー(感想・評価)
良くも悪くも昔のまんま
「シティ・ハンター」は,北条司が「キャッツ・アイ」に続く連載として描いたコミックで,連載されていたのは昭和 60 年から平成 3 年にかけてのことになる。何度かアニメ化されたが,最後のアニメ化作品でも 20 年も前のことになる。従って,本作は,超久しぶりの映像化作品である。北条司の描くキャラクターは美男美女が多く,最先端のアニメ化作品ならさぞかし鮮烈に蘇ってくるのではと期待して見に行ったのだが,大きく肩透かしを食らわせられた気がした。
この 20 年間に,アニメ界は大きな進化を遂げ,「千と千尋の神隠し」から「君の名は。」までを,既に日本人は見て来ているのである。そうした目の肥えた観客相手に,20 年前のままのアニメ映画を見せてくれた本作の意図は何だったのだろうか?仮にオールドファン相手に昔のままの姿にこだわりましたというのなら,新たなファンの獲得は眼中にないということなのかということになるし,わざわざ古いテイストに期待したオールドファンなんてそんなにいるのかという気がする。
何よりガッカリだったのは折角のキャラクターのデザインがあまり丁寧でなく,美男美女キャラの魅力がかなりぼやけてしまっていたことである。獠はまだマシだったが,香や冴子,さらに,わざわざサプライズ登場してくれたあの伝説の3人にしても,プロポーションが各シーンでバラバラといういい加減さだったのには頭を抱えたくなった。これがもし「君の名は。」のクォリティで描かれていたのであれば,と残念に思われてならない。
生体認証やドローンや接客ロボットといった道具立ては現代風だが,話の展開は昭和の香りがするようで,おまけにセクハラ・ギャグが滑りまくっており,目も当てられない感じを受けた。せめて,助平になった時の獠の顔を,三遊亭小遊三風に変えてくれるとかの配慮があったら,少しはウケたのではという気がした。
声優は昔の役をそのまま受け継いだ人が多かったが,声も年を取るんだなというのを実感させられた。最初に聞いた獠の声があまりにオッサン臭かったので愕然としていたら,香も冴子も同様で,とんだサプライズであった。伝説の3人はまるで別の声だったので,お前誰?と言いたくなった。「ハウルの動く城」でも,ソフィーの姿が若返っても声が老婆の時と同じでガッカリしたのを思い出した。
音楽は,昔のテレビアニメでも度々担当者が交代したため,一貫した曲風はなく,今作でも特に目新しさはなかった。昭和の香りのする演出は,敢えて行ったのかもしれないが,どの辺をターゲットにして行ったものか,狙いがわからなかった。キャラクターの描き込みと同様に,映画館でわざわざ上映するなら,もうちょっとやる気を見せて欲しいというのが率直な感想であった。
(映像4+脚本3+役者3+音楽3+演出3)×4= 64 点。