「偉大なる山々に挑む人間たち」クレイジー・フォー・マウンテン とえさんの映画レビュー(感想・評価)
偉大なる山々に挑む人間たち
気づけば、スクリーンに映し出される山々の壮大さと、映像の美しさにすっかり夢中になっていた
この映画で描かれるのは、
なぜ、山は人を夢中にさせるのか
そして、なぜ、人は山に登るのか
である
山といっても、その辺にある山ではなく、エベレストのような最高峰の山々
かつて山々は神々のものであり、
そこに登ろうと思う人はいなかった
しかし「未開の地」を求める人々が入り込むようになると、山はたちまち冒険を求める人たちのものとなる
そんな登山の歴史を紹介しながら、最近では、スキーで降りたり、自転車で登ったり、パラグライダーで降下する危険なエクストリームスポーツへと変わりつつある姿を映し出す
もちろん、時にはそれが命を落とすリスクを背負う側面があることや
自然の猛威に人間は太刀打ちできないことも描いている
きっと、誰の心の中にも「前人未到」という言葉にそそられたり、そこでしか見られない景色を見たいという欲求はあって
しかし「命をかけて」までそこに行くかと言われたら、世界でも、わずかの人たちしか挑戦しないのだろう
そんな、明らかに無謀な挑戦をしている人たちを見ていると、正直「頭おかしいな」と思ってしまうのだけど
そんな風に、「頭がおかしいんじゃないか」と思われるぐらいの行動をして、そこで見えた景色というのは、何物にも変えがたいものがあるんだろうと思う
だからこそ、まるで中毒にでもなったかのように何度も挑戦するのだろう
私は、涼しい映画館の中で、こうして映像をみているだけで充分だと思ったけれど、
彼らの「他の人が経験したことがないことを経験をしたい」という気持ちは理解できる気がした
それにしても、山はあまりにも偉大すぎて、そこに挑む人間はあまりにも小さ過ぎるし
どう考えても、人間が山を制覇することなどできるはずもない
それでも、毎年多くの人たちが命をかけて訪れるようすを見ると、
自然が人間を誘惑しているように感じ、とはいえ、その誘惑に乗った人間が、そこで命を落としても自然は助けてくれない
そこに自然の恐ろしさを感じた
それこそが、神の領域に人間が足を踏み入れたことへの罰なのかもしれない