劇場公開日 2019年1月18日

「脳の処理が追いつかない」映画刀剣乱舞 43さんの映画レビュー(感想・評価)

2.5脳の処理が追いつかない

2019年2月2日
PCから投稿

単純

興奮

萌える

 他の2.5次元作品を見ていない原作ゲームユーザーが見に行った感想。
 2.5次元はどうしても原作イメージと別物になるので避けてきましたが、今回は刀剣男士だけでなく山本、八嶋両氏の他、人間ポジションの役者が大多数でしっかり居るということで、勇気を出して行ってみました。
 結論から言うと、よくできたSF特撮として面白かったです。原作ゲームがサボりがちな(そこが最大の問題なんですが)タイムパラドックスSFをしっかり書いてくれる歴史if作品で、信長、秀吉、光秀の三者も演技派を揃えているおかげで、安っぽい雰囲気にならずに終始見ることができました。
 しかし最大の問題が、刀剣男士のキャラデザ、原作とのイメージズレが、2.5次元では避けられないことだったと思います。「とある本丸」という言葉があれば、細かい本丸の造りやタイムリープ、審神者の設定などには目が瞑れます。アニメならば声という原作との共通項があったので、絵柄が少々違ってもまだ同じ作品として脳が判別できたのですが、しかし実写の世界では、カラフルな髪、カラコン、衣装の不自然さ一つで一瞬にして「作り物感」が増して脳の補正が利かなくなります。
 その補正が上手く行かない人間は所謂2.5次元コンテンツに「向かない」人間なのだと思うのですが、その根本以外は本当によくできている作品なので、自分がそこに違和感を感じない人間だったなら、と、「向かない」ことを残念に思うような、そんな作品だったと思います。何度も見続ければ慣れてくるものでしょうか?
 それにしても山本耕史は素晴らしい…

*アマプラ後、2.5次元演劇について*

 原作ゲームとは2.5次元化の過程で別物になることは避けられない。別物と割り切れないと、2.5に慣れていないゲームユーザーにとってはまあまあきつい。知らない顔の人が出てきて自分の推しの名前を名乗るので、そもそもその時点で2.5が無理だと感じる人もいる。
 また、一般受けするSF時代劇になるにしても、それには役者の演技力が相当必要になる。しかし2.5の世界では特撮、チャンバラ、殺陣特化のニチアサ的な演技の人が多い。結果、時代劇にもあんまりなりきれていない微妙な立ち位置の映画だったんだろうなと思う。平成初期あたりのエスパーとか持ちだしてた頃のゴジラとかもこれに類する。よっぽど世界観や作品全体の雰囲気がしっかりしていないと、荒唐無稽なことを言ってる「演技」をしてるなというのが伝わってくるので、作品世界に入り切れないまま冷めた目で見ることになる。ファンタジー(非現実)は作中一つだけっていうのは、現実に近いがために没入しやすい世界観、作品の雰囲気を作るために必要なことなんだろうなと思う。
 山本耕史や八嶋智人など、演技派はちらほらいたが、下手なのや服飾が上手く行っていないのがひとりでもいると、そいつがフレームに抜かれた瞬間現実に引き戻されるので、SF特撮は本当に難しいと思う。ハリウッドとは言わないが、せめてシンゴジラくらいにはならないと、この「特撮の安っぽさ」「学芸会感」はどうしても拭えないんじゃなかろうか。

43