「応援上映なら「かっけえ~~!」って叫んでる」映画刀剣乱舞 よきさんの映画レビュー(感想・評価)
応援上映なら「かっけえ~~!」って叫んでる
一回目は、どうしてもどこかチープな老審神者のペンダントやゲームに登場しない回復アイテム、実装されていないキャラクターに面食らってしまって、細かい部分まで観られなかったのだけど(ゲーム未プレイ=審神者でない観客は逆に気にならない)表情や殺陣、仕草に注目して観てみると、完成度の高さに惚れ惚れします。スピード感ある殺陣、優雅に動く衣装やウィッグ。見せたかったものがドカンと伝わってくるアクションシーンでした。近年時代劇やチャンバラと呼ばれる物が減って、大河ドラマでも合戦シーンは少なくなっている気がします。私は幼少期から少年漫画系バトルものが好きでして、幼い頃に戻って「かっけえ~~!」と血が滾るようなワクワクする殺陣が見られてすごく楽しかった。殺陣や剣術、居合が好きな方や、昔から時代劇が好きな方だと細かい仕草の意味などもわかって、私のような知識のない者とはまた違った楽しみ方ができるように思います。そういう方のレビューもたくさん読みたいですね。
三日月宗近は、美しく妖艶な、織田信長にとってのファム・ファタール(オムですが、性別を超越した色気があったので敢えてこう表記します)、死へ誘う魔性だと思えたのですが、二度観ると、ファム・ファタールでありながら、信長をあるべき形で終わらせてくれた慈悲深い菩薩のようであったとも思えます。ラストで登場する幼い審神者を、老いていく刀剣の業界に現れた希望(ゲームやそこから派生したコンテンツをきっかけに刀剣そのものに興味を持った人々)の比喩では、と考察している人がいて、刀剣に限らずあらゆる伝統文化、伝統芸能、伝統工芸など、作り手が老いて枯れていくばかりだった物事の手を取り再び立ち上がらせようと奮闘する次世代の人々(継承者)になぞらえたその考察が私はとても好きです。
人に生み出され、人に愛され、人を愛し、その生と死さえ人に委ねないといけない、ひたすらに健気な「物」=「刀剣男士」が次世代の継承者たる私たち若い人間の比喩である幼い審神者を背負い、守り続けると宣言するシーンは、先人からのとても情に溢れ優しいメッセージだと感じました。
劇場に来ていた小さなお子さんが、面白かった!と笑っているのを見た時、三日月宗近の守りたかったものが、確かに守られているのだなと感じ、映画の続きを見ているような気持ちになりました。