「たぶん、こんなストーリーのはず・・・」ともしび りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
たぶん、こんなストーリーのはず・・・
フランス語圏の地方都市。
長年連れ添った夫(アンドレ・ウィルム)とふたりで暮らしているアンナ(シャーロット・ランプリング)。
穏やかな日常のようにみえるが、どこか不穏な雰囲気。
グループワークショップに通うアンナは、ワークショップで顔を真っ赤にし、なにやら奇声をあげる・・・
といったところから始まる物語で、顔を真っ赤にして奇声を上げるのは演劇かなにかの自己表現の一環であるらしい。
カメラは、アンナの顔を正面から捉え、真っ赤から普段色に戻るまでを長廻しで捉える。
このファーストショットから、全編長廻しでアンナの行動を捉えていくが、彼女の背景はほとんど説明されない。
グループワークに通っているぐらいだからなんらかのストレスがあるのだろうが、説明はない。
そして、終始、苦虫をかみ潰したようなアンナ・・・
ということで、ま、なんだかよくわからない老齢の女性の不機嫌な様子を長廻しでみせられて、意識は瞬断。
覚醒するが、そのうち再び瞬断・・・の繰り返し。
なので、重要なシーンを観逃し、聞き逃しの可能性大。
一緒に観た妻から聞いたことも含めて、物語の骨子と背景をまとめると、こんな感じ。
アンナと夫は長年仲睦まじく暮らしていたが、ある事件が発覚する。
それは、夫による未成年男児への性的虐待。
アンナは信じられなかったが、離れて暮らす息子が警察に通報したため、夫は警察へ出頭、アンナはそれに付き添う。
未決犯として夫は収監されるが、アンナは夫が事件を起こしたかどうかには核心が持てない。
息子一家との断絶は深まり、孫の誕生日に訪れるが、追い返されてしまう。
そんなある日、天井からの漏水修繕のため、箪笥を動かしたところ、箪笥の裏側から事件を裏付けるおぞましい写真を見つけてしまう。
夫の無実を信じていたわけではないが、アンナは生きる希望が持てなくなってしまう。
折しも、海岸にクジラが打ち上げられ、死んだクジラは腐敗していく。
ワークショップでの成果発表で、アンナは声が出なくなってしまう・・・
というもの。
早い段階で意識が瞬断したので、夫がなぜ収監されているのか、その理由がわからなかった。
映画では、
アンナの部屋の外で、被害者男児の母親が大声で詰るシーンがあり、その台詞からわかる(らしい。妻から聞いたが、まるで記憶になかった・・・)。
肝心のところがわかっていなかったゆえに、映画が面白くなかったのかと思ったが、どうもそうではなく、やはり、圧倒的に物語の背景描写が少なすぎ。
物語を紐解くタイプの映画ではなく、ある不穏な状況下の女性の心裡心情を観る映画だと思うが、背景がわからないとその心裡心情も理解しづらい。
その上、シャーロット・ランプリングの演技は抑制が効きすぎて、あまりに感情の振れ幅が小さすぎ。
わからないこちらが悪い、と言われるかもしれないが。
ということで、『まぼろし』『さざなみ』と比べると、あまり評価はできません。