「夏休みにて、裏返る世界の果て」ペンギン・ハイウェイ バスト・ラーさんの映画レビュー(感想・評価)
夏休みにて、裏返る世界の果て
クリックして本文を読む
村上春樹の小説「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」をご存知でしょうか
映画を見終わって一番に思い浮かんだのが森見版世界の終わりとハードボイルドワンダーランド
小説のあらすじは、主人公の無意識下に記憶を元に創られたループする閉ざされた物語“世界の終わり”を訪れる記憶のないもう一人の自分
たとえ現実の肉体が滅んでも意識はその世界の中で永遠に生きられるし、失ってしまったあらゆる人や物にもう一度出会える理想郷
小説のカギを握る、主人公の頭に“世界の終わり”を創った博士はいいます、永遠に至るには命を拡大するのではなく有限の命を無限に細分化して達成されると
しかしそんな都合のいい理想郷が存在するわけもなく主人公の影はこの世界を脱出するよう本体に呼びかける、帳尻を合わすために誰かが犠牲になっている永遠に意味はないと
アオヤマ君の完璧な理想たるお姉さん、ペンギンたち、そしてジャバウォックの関係も永遠とその落とし穴を想起させる
ペンギン・ハイウェイの世界の果ても遥か宇宙の外にあるのではなく町外れの森の中でぽっかりと穴を開けて浮かんでいる、裏返って世界を飲み込もうと窺うかのように胎動しながら
しかしながらそこは森見登美彦のキャラクター、小生意気でどこか抜けている自信家のアオヤマ君やペンギンを生み出す自らも消える宿命にあるお姉さんに悲壮感は皆無、夏の町並みの輝く背景の美しさも小学生の夏休みのワクワクをアオヤマ君を通して体験しているようで気持ちがいい
特にクライマックスに向けてお姉さんと一緒に“海”に飛び込んでからの疾走感で最後の別れにも希望がある
一つ不満をあげるならお姉さんの声に声優を使ってほしかった
コメントする