「お姉さんは何者か?答えは無い 文系SF映画」ペンギン・ハイウェイ たまねぎ なきおさんの映画レビュー(感想・評価)
お姉さんは何者か?答えは無い 文系SF映画
おそらくこれは物語の形をした詩編に近い作品なのだと思いました。
白と黒のペンギンにチェス
光と闇で変わるお姉さんパワー
生と死を思わせる夢や幻想
男と女であり子供と大人でもある少年とお姉さん
終わりと始まりが繋がる川と宇宙
こういった対極でありながら対で出来ている物をかき集め、
本当は誰も何も分かってないのに分かったつもりになってる人に、
『1回 常識(科学的な考え)を捨てて世の中を見てみたらどうですか?』というメッセージが詰まってるように思う。
この作品自体が科学の対極の考えに乗っ取った作品だと示唆しているようです。
物語の中でも 早々に
『相対性理論? 難しくて分からないや』
と科学的角度の視点にNGを出してますし
終盤でウミの暴走が沈静化した時に
科学者の大人が少年に対して
「私(科学者)には何が起きているか分からないけど、子供の君には何が起きているか分かっているんだね」と呟きます。
そう、私達は実際は何も分かっていない。
ビッグバンが~ シミュレーション論が~
宇宙の前には揺らぎが~ 等と、
科学的な根拠に基づいた説はいくらでもあるし、大人になるほど『そういうものか』と根拠のある仮説に馴染んで納得していくが、
結局、自分が馴染んでいるだけで実の所は何も変わらず【私達は何も知らないし分かってない】。
そういう我々大人に
何も知らない分からない事を素直に直視していた子供の時のような世界の広がりや美しさや怖さ、不思議に満ちていた感覚を思い起こさせるための作品なんだと思う。
なので、
お姉さんが死者、タイムトラベラー、神の類い、そういった講釈はどうでもよく
単純に不思議をそのまま受け入れられるかどうかを試させようとしている。
一つジョークが効いていたのは
劇中に登場した『終わりと始まりが繋がっているカワ』が、暴走したウミが消滅したのと同時に枯れてしまっているのです。
ウミが消えたからカワも消えた
ほとんどダジャレですが気が効いてるなと感心してしまいました(笑)
ただ、これはミュージックビデオではなく映画なので、やはり理路整然とした筋書きやエンターテイメントを求めてしまう自分がいます。
下らないアニメ映画とは比べるまでもない位に良い内容だし、この映画自体の狙いも分かるが若干の退屈さは否めない。
特に子供にとっては退屈だろう(笑)
大人のデトックスアニメ。