「王道にして個性派」ペンギン・ハイウェイ kkmxさんの映画レビュー(感想・評価)
王道にして個性派
王道のジュブナイル映画でしたが、キャラクターや設定に個性があって、飽きずに楽しく鑑賞できました。
アオヤマくんのキャラがいい感じですね。こまっしゃくれてるけど、なんか可愛らしい。彼は知的な子どもで知識で世界を理解できると思っている節があります。そんな彼が「好き」という感情に出会うという展開が、なかなかに魅力的でした。普段は観察とか言ってるクセに、お姉さんのスケッチは、恋心だだ漏れで微笑ましい。
サイドキックのウチダくんの優しい感じも良かったです。アオヤマくんとは対になっている印象。もっと活躍して欲しかったです。
ハマモトさんはヒロインじゃないのがもったいないほど惹きつけられる個性があって素敵でした。あんなに理知的なのに、お姉さんへの嫉妬がバリバリだったり、直情的で人間味があってグッド。色素薄めの上品な出で立ちもイカしてました。
あと、アオヤマ家がいいですね。最近は機能不全家族の映画ばっか観てたんで、あたたかな家族描写を観ると、それだけで気持ちがほっこり。
アオヤマ父にも感激です。小4の息子にブレインストーミングを教えるなんて最高ですよ。
アオヤマくんも、妹の不安に寄り添ったりできるし、支え合える家族なんだなぁとしみじみしました。ご飯も超美味しそうだし。
お姉さん、という存在は抽象的ですよね。名前で呼び合う関係ではないので、確固たる存在ではなく、象徴的存在なんでしょうね。少年時代の憧憬の象徴というか、内なる女性像の芽生えというか。
個人的には、もう少し具体的な存在だった方が乗れたかも、と感じています。でもこれは趣味の問題ですね。
また、いろいろと謎が多く、象徴的に深読みできそうなモノもたくさん見受けられました。例えば、なぜ「うみ」なのか、なぜわざわざジャバウォックなのか、とか。水路が循環しているとかも気にはなりました。
とはいえ、なぜか本作はさほど謎解きしたいとは思わないです。本作は、謎を解くというよりも、謎と出会い、向かい合うことが主題になっているからかもしれません。
(いや、でもジャバウォックは気になる)
本作はとてもチャーミングで爽やかな映画だと感じています。物足りなさはありますが、健全な子どもの成長が描かれていて、ほっこりしました。