「平成最後の夏らしい作品」ペンギン・ハイウェイ くみたん1642さんの映画レビュー(感想・評価)
平成最後の夏らしい作品
暑い日が続き、ベタベタと無駄な夏休みを過ごしたくはないと思いつつも、なにかグッとくるものがなくただ茫然と過ごしていた。そんな中、ふと引っかかったのがこの作品。ペンギンハイウェイだった。
予備知識もなく「まあ何もしないよりは」と半ばダメ元で見に行ったが、その内容は期待を裏切ってくれた。
ネタバレはしないが説明のために若干漏れがあるかもしれないのでご注意を。
<構成要素>
・全年齢対象 ・ペンギン ・小学生 ・お姉さん
・成長 ・青春 ・友情 ・謎解き ・感動 ・恋愛 ・SF ・ファンタジー ・アクション
<ストーリー>
ざっくり書くと少年の成長物語だが、SFでもあり、恋愛要素も入ってくる。ファンタジーであり、コメディでもあり、アクションでもある。全ての要素がかなり複雑に絡み合い、「結局何なの?」と聞かれたら、「うーん全部」と答えたくなる。それくらい“総合力が高い”と思う。ひとつの観点からしか描けないのではなく、どんな人にも面白いと思ってもらえるように、様々なテーマをカバーしていると言っていい。子供が見て楽しめる軽さと大人が見て楽しめる深さがある。
というか、大人が見ても理解できない部分が多く「???」となってしまう人も多いだろう。しかし注意してもらいたい。この映画の製作陣が本当に描きたかったのは、全ての謎を解き明かすミステリー童話なのかということを。私はそうは考えない。あくまで小学4年生の夏休みであり、そこから何を思ったり楽しんだりするかはそれこそ子供のように自由なのだと。ゆえに、これは製作陣からの挑戦状なのではないかと思う。「意味が分かりませんでしたね。残念。」などで終わったらそれこそつまらない。この作品に対して面白いと思うかはあなた次第だ。
<ペンギン>
題名にもあるように、この作品にはペンギンが出てくる。しかもいっぱい出てくる。数えきれないくらいに。そのかわいさと言ったら、この上ない。つるっとしたフォルム、透き通った目、ヨチヨチと歩くその姿。お子さんも話はよくわからないかもしれないが、ペンギンの可愛さだけは絶対に裏切らない。この動物にはそのようなすべての人の目を奪うモデル性がある。
<主人公:アオヤマ君>
アオヤマ君はまだ小学生である。小学生は作品や人物像によっては幼稚に描かれる年齢だが、この子は違った。確かに年齢は幼いのだが、誰よりも純粋な心の持ち主で、探求心がすごい。その探求心は、まさに男性なら夏休みの探検中に一度は思うであろう「この道の先はどうなっているのだろう」とか「この水はどこから流れてくるのだろう」とかそういう直感的なものだと思う。そのため、まるで自分が夏休みの小さな冒険をしているかのような気分になった。誰もが自分を重ねてしまう少年だと思う。
<お姉さん>
おっぱいがでかい。
<作画>
私はあまり絵に関しての造詣が深くないので細かいことは言えないが、いわゆる違和感といったものは全く無かった。終始安定して綺麗な絵を維持できていたと思う。しいて言えば、キラキラとした水の表現や、澄んだ目などの透明の表現がすごく良かった。少年の心の純粋さをよく表現できている。
<映像、演出>
特にカメラワークには驚かされた。具体的には言えないが、期待していい。また、落ち着くシーンと興奮するシーンのテンションの差がとても広く、落ち着いたシーンから一気に緊迫したシーンに移り変わるときのワクワクドキドキ感は最高。
<音楽>
かなりバランスが良かった。落ち着いたシーンではファゴットなどの木管楽器で心を落ち着かせ、緊迫したシーンでは弦楽器でテンションを上げ、壮大なシーンでは金管楽器を中心にバンド全体で世界の広さを表現していた。またヴィオラ?のセッションがかなり印象に残っている。文句なし。
<視聴者層>
見る前の印象では、20代の男性が多いかと思ったが、そんなことはなかった。家族連れが多く、年齢の幅はかなり広い。実際に私は映画館で観たのだが、右隣は子供が2人の4人家族で、左隣は2人組のご婦人だった。
観賞中には子供の笑い声が聞こえ、少し微笑ましかった。
<総評>
なんといっても見終わった後の心の満足感がすごい。心という器をなみなみを満たしてくれた。文句なしの100点だ。余談だが、いわゆる“おねショタ”好きであれば120点になりうると思う。
もし見ようか悩んでいる人がいたら、ぜひ公式サイトのプロモーションビデオを見に行ってくれ。そこで少しでも「いいかも?」と思ってくれたら、今すぐに見に行ってもらいたい。きっと君を爽やかで純粋な世界に連れて行ってくれるだろう。
ペンギンとお姉さんと過ごした夏の思い出。どこまでも透きとおり、少年時代を思い出させてくれる。そんなひと夏。
熱い夏の終わりをこの作品と一緒に過ごしてはみないだろうか。