「中国の今と昔」詩季織々 ローチさんの映画レビュー(感想・評価)
中国の今と昔
監督が秒速5センチメートルを観て感銘を受け、何年もラブコールを送って実現した企画だそうだが、とても美しいドラマに仕上がっている。
「衣食住行」という生活の基本をテーマにしていて、現代の中国の市井の日常生活が垣間見える。急速な経済成長で移り変わる景色を、コミックス・ウェーブ・フィルムならではの美しい背景で描いており、そこに生きる人々の等身大の気持ちを情景に託して語っている。
経済成長で得たものも大きいが、失ったものもたくさんある。総監督のリ・ハオリン氏は、生まれ育った故郷の失われてゆく景色を美しいアニメーションで残したかったと、製作の動機を語っているが、ニュースなどではなかなかうかがい知ることのできない、中国の今の人々の寂寥感がこの映画には描かれている。
でも失ったものへの憧憬だけでなく、前向きな希望の残しているのも好感が持てる。これを観ると一度石庫門の住宅地を訪れたくなるだろう。
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