劇場公開日 2023年11月3日

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「政治と愛のスパイ合戦」サタデー・フィクション 文字読みさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0政治と愛のスパイ合戦

2023年11月3日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

2019年。ロウ・イエ監督。真珠湾攻撃を目前にした時期の上海。日本だけでなく各国の租界や共同租界が入り組み、さらに親日政府と重慶国民政府との派閥争いも相まってスパイ合戦が繰り広げられている。そこへ、舞台役者である女性が舞い戻ることで、政治と愛の複雑な渦が動き始める、という話。
現実のスパイ合戦と舞台内容が重なって虚実がわからなくなっていく構成。この仕掛けがうまくいっているかどうかがすべて。催眠術らしき不思議な力を発揮する「女優」が中心になっているが、最後になるまでその真意は隠されている。つまり、中心ではあるが主観性を担っていない。中心の謎をめぐって周囲がざわざわと動く。周囲の人物たちはわかりやすい役柄を担っている。父親(的)、恋人、かつての恋人(夫)、協力者(男・女)、敵、敵の用心棒、裏切り者。父親(的)と裏切り者以外の全員が死んでしまうのだから、なんとも悲劇的な結末といえるだろう。

文字読み